前述の三宅さんの書籍の中に「司馬遼太郎の文庫本を読むサラリーマン」という項があります。これはワロタ!です。60年代に書かれた司馬の文庫本を1970年代のサラリーマンが「坂の上に上がるロマンを感じ立身出世を目指したと。そうかもしれません。私が10年以上かけて読み続け(未だ全部読み切れない)のは司馬遼太郎の歴史観に事実と創作が入り混じった独特のテイストにハマるからでしょう。三宅さんも述べていますが、『坂の上の雲』や『竜馬が行く』は8巻まであり極めて重い内容です。当時のサラリーマンの方は今よりはるかに長時間労働をしていたのですから仕事が理由で読まなかったというのは当てはまらないように感じます。

私が土建屋でサラリーマンをしていた時の会社のランチや飲み会の会話はいわゆる名著の評論も多く話題に上がりました。レベル高しです。三国志の話は特に盛り上がっていて当時は読んでいないと会話に入れなかったとも言えます。つまり読むことが必然だったのです。ところが今は誰も読まないからそんな会話にならないのです。『成瀬は天下を取りに行く』の書評話を男性と酒飲み話にするのはとても想像できないのです。

私が知る限り良い書籍は結構あります。ただ、駄作も多いし、感性に訴えお涙頂戴系の女性作家小説と論理的組み立てがある男性作家のサスペンスでは全く違います。自分がどんな書籍が好きか、まずはもう一度見極める、そして完読する癖をつけるのがよいでしょう。おおむね350ページが一つの目安。これより長いと面白くない小説は苦痛です。これに慣れれば『カラマーゾフの兄弟』の1800ページに是非とも挑戦を。まぁ7割の方は途中棄権すると思いますが。

秋になりました。読書の秋、書店に行ってみようではありませんか?

では今日はこのぐらいで。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年9月15日の記事より転載させていただきました。