アゼルバイジャンは対ロでは中立国。テュルク系民族のためトルコとは一心同体、イスラム教シーア派が主流で権威主義。ナゴルノ カラバフというアゼルバイジャン国内にあるアルメニア系住民の独立運動を契機とした戦争を経ており、隣国アルメニアとは犬猿の関係です。
アルメニアは親ロシアでしたが、ウクライナ問題やナゴルノ カラバフ問題をめぐるロシアの態度もあり、最近親ロシアから離脱の方向にみえます。キリスト教が国教でトルコとは敵対関係。アルメニア人大虐殺を聞いたことがあるかもしれませんが、ユダヤ人大虐殺と並び、オスマントルコがアルメニア人に行った蛮行で歴史的なジュノサイドとされます。
ジョージアは従来は親欧米でロシアからすればウクライナの次の標的はジョージアともいわれてきました。しかし、近年は親欧米路線の大統領と議会の不和が発生、現在の与党がロシア寄りでロシアに似たスパイ法案を可決させようと画策、大統領は拒否権を行使していますが、大統領の権限が限定されるため、事の成り行きは予断を許しません。実態としてはジョージアは対ロシアは中立的です。
つまりこれら3つの小国がロシアと欧米諸国、さらにはトルコとの綱引きの渦中にあり、先行きが見通せない状況にあります。
その中で今回のニューカレドニア問題はアゼルバイジャンは表面上、関与を否定していますが、フランスへの報復とみています。上述のナゴルノ カラバフ戦争はアゼルバイジャンが勝ち、停戦し、多くのアゼルバイジャン領にあるアルメニア人はアルメニアに移住しています。ただ、その戦争の際、アルメニアに肩を持ったフランスはアゼルバイジャンにとってはムカつくわけで、今回のニューカレドニア問題の暗躍理由とされます。
ニューカレドニアについては以前から中国も独立支援派とされ、今後世論のみならず世界のボイスを巻き込んだ国家の大争奪戦が起きているとしてもよいでしょう。
中国はニッケルなどの資源のほか、外交上、太平洋上の島嶼国との関係強化を図っているのでその一環かと思います。現在のフランス領のままだと中国は面白くないわけです。確かに南太平洋の小島をいまだフランスが領土としているのは時代錯誤的な印象もあります。もちろん、それを言うとグアムやサイパンはどうなのかとご指摘を受けるかもしれませんが、世の中の趨勢としては独立させていくのが筋道なのでしょう。ただ、中国がウザいですが。
今回、マクロン大統領は「本件は自分がやる」といってニューカレドニアに緊急事態宣言を発令し空港などを封鎖している中での訪問となります。マクロン大統領の命を懸けた説得工作遠征ともいえるでしょう。ちなみにニューカレドニアの独立派は左派で与党は右派でフランス依存を維持したいという派閥です。
世界は思った以上に紛争だらけである意味、戦争前夜的な空気がないとも限りません。なぜ紛争がこれほど増えたのか、これは今日、この項では書ききれませんのでまたの機会に譲りますが、テクノロジーが人間を不和にしたという可能性は無きにしも非ずのような気がします。テクノロジーがなければアゼルバイジャンがニューカレドニアにチャチャを入れる方法もなかったわけですから。
そういう意味では世界の不和は必ずしも国境を接している国々の外交関係から遠隔国への影響力行使といったとび技すら可能になってきたと言わざるを得ません。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2024年5月23日の記事より転載させていただきました。
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