次に「イハ戦争」。23年10月7日早朝、ハマスがテルアビブを含むイスラエル各地に向けてロケット弾3千発(イスラエル発表。ハマス発表は5千発)を発射し、同時にガザ地区に隣接するイスラエル南部各地に戦闘員2900人を侵入させて、多数のイスラエル人に被害を及ぼすというテロを行った。
このテロによるイスラエル側の死者は1300人、負傷者は数千人に上り、幼児の殺害や女性に対するレイプも行われた。また2百数十人が拉致されて、今も約130人が人質となったままになっている。これら被害者には滞在中の外国人70余人が含まれており、その関係者による公の証言も多数存在する。
イスラエル軍も同日に反撃を開始し、テロの実行者がハマスの軍事部門カッサーム部隊であったことから、翌8日にはハマスに対して宣戦布告した。それから数日間、ハマスはガザ地区からのロケット弾発射を続ける一方、イスラエル軍も戦闘機、ドローン、砲兵部隊を用いてガザ地区を空爆・砲撃した。
テロ(テロリズム)とは、「一定の政治目的のために、暗殺や暴行、粛清などの直接的な恐怖手段に訴える主義。暴力主義。また、その行為」を指す。よってハマスの行為は紛れもないテロだ。ネタニヤフ首相はこのテロリストに宣戦布告し、ハマスの殲滅と人質全員の奪還を誓って、地上軍をガザに進めた。
それ以降の戦況は縷々報道されている通りだが、戦場となっているガザでの死者について4月20日の「朝日新聞」は34千人(負傷者は77千人)を超えるとし、死亡した女性の内6千人が母親で、それにより19千人の子供が孤児になったと報じている。
死者34千人は「ガザ保健省」の、また死亡女性6千人は「国連女性機関」の発表と記事にある。が、同紙は「ガザ保健省」がハマスの傘下にあることや、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)がハマスなどの武装集団から450人超の「軍事工作員」を雇用していたことには一言も触れていない。
3月半ば国連児童基金はガザ保健省の数字を引いてガザで13,450人の子供が殺害されたと発表した。が、国連人道問題調整事務所は5月8日の報告書で、4月末時点の子供の死者を7,797人に、女性の死傷者を9,500人超から5,000人未満に修正した。国連の報道官は「JNS」紙に「紛争の過程で数値は何度も調整される。紛争が終われば正確な数字が得られるだろう」と述べた(5月12日の「JNS」)。
米国の保守メディア「Newsmax」は3月10日、「ガザの死亡者数は捏造である」とのペンシルバニア大学ウォートンスクールの統計学教授エイブラハム・ワイナーによる「タブレット」誌への寄稿の中身を報じている。同教授は概略こう述べている。
ガザ保健省の数字をグラフ化すると、1日の死傷者数の平均が270人±15%程度で、驚くほど変動が少ない。平均の2倍の日もあれば半分の日もあるはずだ。彼らは自然発生的な数の挙動を理解していないのだろう。残念ながら、この結論を検証する管理データは入手できないが、この数字は疑わしい。
女性と子供が殺されたとハマスが主張しているのも信用できない。イスラエルの攻撃の波と犠牲者数は連動して動くはずだが、データはそれを示していない。ハマスは全体の約70%を女性と子供に恣意的に割り当て、それを日によってランダムに分けて、予め決められた総数に従って男性の数を補充した。これで観測されたすべてのデータが説明できる。
民間人の死傷者数は極端に誇張されている可能性が高い。イスラエルは12千人のハマス戦闘員を殺害した推定している。これが正確なら非戦闘員の死傷者の比率は驚くほど低い。民間人を盾にした市街戦の基準からすれば、不必要な人命の損失を防ぐための驚くべき努力が成功している。
こうした統計学者の考察にも関わらずバイデンは5月8日、「ガザでは爆弾やその他の人口密集地襲撃の結果として民間人が殺害されている」とし、「イスラエル軍がラファへの侵攻を開始した場合、イスラエルへの爆弾や砲弾などの攻撃兵器の供給を停止する」と警告した。
が、ブリンケン国務長官は10日、「イスラエルが米国の武器使用条件に違反したと結論付けてはいない」と述べ、20人以上の民主党下院議員も同日、「武器の供給停止は、我々の敵であるハマス、ヒズボラ、フーシ派などイランが支援する勢力を勇気づけるだけだ」「ハマスは『完全に排除』されねばならない」とする書簡をサリバン国家安全保障担当補佐官に提出した。
共和党では、バイデンより一歳年長のマコネル上院院内総務が9日、「イスラエルは最高の基準を守り、民間人への被害を最小限に抑えるよう慎重に配慮している」とし、「イスラエルを地上から消すと誓ったハマスにとって、民間人の死傷者は悲劇ではなく商売の道具だ」とバイデンを強く批判した。
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戦時国際法(国際人道法)は、民用物(家屋、集合住宅、企業、礼拝所、病院、学校、文化財など)への直接攻撃を禁じている。が、それには「軍事目的としての使用や軍事目標になっていない限り」との但し書きがあり、通常民用物とされる施設に軍隊が配備されている場合の攻撃は禁止されていない。
つまり、ミサイルやドローンを使ってウクライナの国土を無差別攻撃するロシアも、また病院や学校などの地下に基地を設けて民間人や人質を盾に使うハマスも、明らかに戦時国際法に違反している。犠牲になったガザの民間人には気の毒なことだが、恨むべきはイスラエルではなくハマスである。
以上が、筆者がウクライナとイスラエルを擁護する理由である。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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