米国債万年強気相場が崩壊

そればかりではありません。2022年春からの連続利上げは、過去約40年にわたって続いていた金融業界では珍しいほどの長期的な趨勢だった米国債指数の上昇基調を完全に下落基調に転換させてしまいました。

悪いときには悪いことが重なるもので、平穏無事な時代にはだいたいにおいて逆相関関係にある債券価格と株価が、深刻な経済危機の時代には正相関、つまり値上がりするときには一緒に上がり値下がりするときには一緒に下がる傾向に変わります。

そして今、S&P500株価指数とブルームバーグ総合債券価格指数が+0.70という史上最高の正相関を示しており、いつアメリカ株全体が4年越しの2ケタ下落が続く債券ベア相場に巻き込まれてもおかしくない形勢です。

こうして内憂外患こもごも来たるアメリカの金融市場アナリストが、自暴自棄的に「日本の円買い介入は絶対失敗する」と息巻いているのは、なかなか興味深い現象です。

日本を貧しくできればアメリカが崩壊してもいいのか?

ある金融アナリストは、なぜ円買い介入は失敗するかをこう説明しています。

「大規模な円買い介入を続けるには、米国債を大量に売らなければならない。すると米国債が安くなって金利が上がる。そうなると高金利を求めて世界中からドル買いが入って、円はますます安くなる」

なるほど、一見筋は通っています。どこが問題かというと、政府も企業も家計も赤字だらけのアメリカで米国債がさらに下がって金利負担が拡大することを「それでますます円が安くなるなら受け入れよう」としていることです。

日本は今より円安が進んでもじわじわ生活が貧しくなる程度ですが、アメリカはこのまま金利負担が拡大しつづけたら、確実に経済全体が崩壊します。

経済崩壊以前にすでに社会が荒れすさみきっているアメリカで、自国経済を崩壊させてでも日本を貧しくさせたいというのは、経済は低迷が続いても静かで平和で清潔な社会を守ってきた日本がうらやましくて仕方がないからでしょう。

付け加えておけば「政府・中央銀行による為替相場介入は必ず失敗する」というのは、本来弱い自国通貨を無理やり強くしようとする介入には当てはまりますが、本来強い円を無理やり弱くしようとしてきた日本には、まったく当てはまりません。

1990年頃円が1ドル120円近くまで上昇したとき「これでは輸出産業が壊滅する」と慌てて円安政策をとった日銀は、その後1ドル140円まで円安が進むと一転して円買い・ドル売り介入に踏み切りました。

その効果は絶大で1ドル80円まで円高が進みました。円買い介入は大成功だったのです。1990年代半ばでも、2010年頃でも円高をそのまま受け入れていればだいたい1ドル80円あたりまで円高が進むので、これが円の実力だと思います。

そして日本国民は世界中のモノやサービスを現在の半額で手に入れることができて、消費主導の経済成長を実現できます。

アメリカは、自分の選んだ借金で首が回らないくせに高金利政策を進めるという道で奈落の底まで沈んでいけばよろしい。ただそれだけのことです。

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編集部より:この記事は増田悦佐氏のブログ「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」2024年5月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「読みたいから書き、書きたいから調べるーー増田悦佐の珍事・奇書探訪」をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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