マーケティングの現場で「Sunk Cost(以下:サンクコスト)」という言葉に注目が集まっています。

サンクは英語で沈むという意味があり、沈んでしまって取り返すことのできない費用であることから、日本語では「埋没費用」と表現されています。

実はサンクコストはビジネスシーンだけではなく、私たちの日常生活のあらゆる場面で発生し、意思決定に大きな影響を与えるといわれています。

本記事ではサンクコストについての解説や、マーケティングの現場での具体的な活用例を紹介します。

目次
サンクコストとは
  一度払うと取り返せない投資費用
  サンクコスト効果
  サンクコスト効果とコンコルド効果
日常生活の中のサンクコストの事例
  事例1. 順番待ちの途中で抜けられない
  事例2. ギャンブルでの課金をやめられない
  事例3. 読書を途中でやめられない
  事例4. 事業を途中で打ち切れない
サンクコスト効果のマーケティング事例
  1. 定期購読の雑誌を継続購入することで完成する付録
  2. 携帯ゲームのガチャ
  3. 会員ランクやポイントの発行
サンクコストについて理解し、マーケティングへの活用を

サンクコストとは

回収ができなくなった投資費用を意味するサンクコストは、経済的損失だけではなく、人々の意思決定にさまざまな影響を与えることがわかっています。マーケティング市場でサンクコストが注目を集めている理由も、まさにその点にあります。

まずはサンクコストの意味やその及ぼす影響について、具体的に紹介していきます。

一度払うと取り返せない投資費用

たとえば新規のカフェをオープンしたとしましょう。開店資金として3,000万円を投資したのに、すぐ近くに話題のチェーン系カフェが開店してしまい、客足は伸びないどころか減少の一途という状況になったとします。

そこで黒字化しないまま閉店してしまった場合、開店資金3,000万円は回収できません。この例のように「投資したのに回収できない費用」がサンクコストです。

サンクコストはビジネスシーンだけではなく、私たちの日常生活のあらゆる場面にも潜んでいます。

シーズン終わりのバーゲンで15万円のカシミアのコートを購入し、次のシーズンに着るのを楽しみにしていたとします。ところが、シーズン到来で袖を通した際、あちこちに虫食いの小さな穴があり、とても着られる状態ではなくなっていました。

コートを廃棄することになった場合、購入費用の15万円は「投資効果を1度も享受しないままに回収不能になった」ことになります。こうしたものもサンクコストといえます。

サンクコスト効果

目の前にあるコートは「とても着られる状態ではない」ものになっています。しかしカシミヤのコートを捨ててしまえば、購入費用の15万円は無に帰します。

サンクコストが発生すると、「せっかく15万円も払ったのに」といった意識に支配され、冷静な判断が下せなくなってしまいます。不可能なことでもなんとかして投資を回収しようとします。

損失の原因を自分以外のものに押し付けて自身を正当化する「認知的不調和」や、意思決定したことに対して一貫性のある行動をとろうとする「一貫性の心理」といった、さまざまな心理がはたらくためです。

このように、投資したお金、労力、時間などを惜しむ気持ちが、これからの意思決定に影響を及ぼすことを「サンクコスト効果」と呼びます。

サンクコスト効果とコンコルド効果

サンクコスト効果のほかに、「コンコルド効果」という、同じ意味を持つ言葉があります。

かつてイギリスとフランスが共同で開発し、世界で初めて「音速を超える飛行機」としてパリとニューヨークを3時間以下でつないで名を馳せた「コンコルド」という飛行機がありました。

この飛行機には巨額の開発費用がかけられていましたが、「離着陸できる空港の条件が限られる」「定員数が少ない」といった理由から採算が取れないことを理由に発注のキャンセルが相次ぎます。

結果として採算ラインとされた250機より大幅に少ない製造数に留まってしまいました。そのため最終的に数兆円の赤字が発生し、結局は飛行機事故をきっかけにプロジェクトは放棄されました。

コンコルドの場合、開発途中で黒字化が望めないことがわかっていましたが、それまでの投資を無駄にしたくないと開発が続行され(サンクコスト効果)、結果として損失額がより巨大化してしまいました。

その損害額のあまりの大きさから、サンクコスト効果のことをコンコルド効果とも呼ぶようになりました。

日常生活の中のサンクコストの事例

日常生活の中に潜むサンクコストの事例としてカシミアコートの話を紹介しましたが、ここではサンクコストに対する理解を深めるために、日常生活の中で誰もが遭遇する事例について、さらに紹介していきます。

事例1. 順番待ちの途中で抜けられない

人気の行列店に並んで順番を待っている時、待ち時間30分といわれたのに45分経っても入店できる気配がないと、「他の店に行く」という選択肢が浮かびます。

ところが並んだ時間が長ければ長いほど、「ここまで並んだのだからあと少しだけ並んでみよう」と思い直し、さらに我慢して順番を待ってしまいます。

この場合、「それまでに並んだ時間」がサンクコストになります。このまま並ぶかすぐに入店できる他店へ移動するのかを決断する場合、「過去に並んだ時間」というサンクコストを排除して判断しないと、合理性な結論が得られません。

事例2. ギャンブルでの課金をやめられない

サンクコスト効果の影響が深刻になる事例が、ギャンブルです。

たとえばパチンコやスロットをして、5万円を投入しても全く当たりが出なかったとします。「すでに5万円損失している」のが事実です。こうした場合、これ以上損失を広げないためには「今日はツキがない」とでも思って店を後にするのが合理的な判断となります。

ところがここでサンクコスト効果の影響を受けると、「5万円も投入したのだから少しでも回収したい」「あと1万円投入すれば当たりが出て5万円も回収できる」と考え、そのままギャンブルを続けてしまうことがあります。そうした行為は、結果としてさらに負けを大きくしてしまう可能性につながってしまいます。

事例3. 読書を途中でやめられない

サンクコストは、読書や映画鑑賞にも当てはまります。

話題のベストセラーだから、という理由で3,000円の海外の翻訳本を購入したとします。ところが読み始めてみたら、自分の価値観とは合わない内容で、面白さを感じませんでした。

この場合、合理的な判断をするのであれば「つまらない本を読むのは時間の無駄」と決断して、読書の時間をより有益なことに充てることでしょう。ところが「3,000円も出して買ったのに」というサンクコスト効果がはたらくと、最後まで読んで「面白くもない本を読んで時間を無駄にしてしまった」と後悔する結果になりかねません。

事例4. 事業を途中で打ち切れない

ビジネスシーンでは、合理的な判断を下さないと、時に事業にとって命取りになる場合があります。

新規事業への参入を目指して3年に及ぶ準備期間を設け、さらに1億円の費用をかけたとします。

しかしその事業が3年連続赤字となり、事業の進退を決定しなければならなくなった場合はどうでしょうか。合理的な判断をするためには、事業が今後黒字化する可能性があるのかという1点に絞って決断しなければなりません。

ところが「参入コストとして、たくさんの時間とお金と人員をかけたから」というサンクコスト効果がはたらくと、撤退のタイミングを逃して損失額を膨らませてしまいます。

サンクコスト効果のマーケティング事例

サンクコスト効果のデメリットを紹介してきましたが、扱い方次第でビジネスチャンスにもつなげられます。

ここでは、サンクコスト効果をビジネス利用した3つの事例について紹介します。

1. 定期購読の雑誌を継続購入することで完成する付録

テレビCMなどでもよく目にする出版物に、「パートワーク(分冊百科)」があります。

これは1年程度毎月雑誌を購入し、付録のパーツを組み立てることで1つのプラモデルなどを完成させるスタイルのもので、通常創刊号だけが破格の値段設定になっています。

安さに惹かれて創刊号を購入した読者は、途中でプラモデル作りに飽きてしまっても、それまでに払った購入代金が惜しくて毎月雑誌を買い続けてしまうことがあります。

これはサンクコスト効果をマーケティング活用した好例といえます。

2. 携帯ゲームのガチャ

サンクコスト効果を活用したマーケティング戦略が、間接的に社会問題にまで発展した事例が携帯ゲームです。

ゲームは無料でプレイできますが、レアアイテムや自分の欲しいキャラクターを獲得するためには、「ガチャ」などと呼ばれる課金サービスを利用すると有利になります。

その中に、特定のアイテムを全て揃えなければ目的のアイテムを獲得できない「コンプリートガチャ」と呼ばれる仕組みがあります。

これは「ここまで揃ったのだから」「3,000円も使ったのだから」というサンクコスト効果を使い、目的のアイテムを獲得するまで課金を続けてしまう流れを生み出しました。

ビジネスの視点では利益につながりますが、親のクレジットカードを無断で利用するなどして高額な課金をするケースが目立つようになり、社会問題として注視されるまでになりました。

3. 会員ランクやポイントの発行

通販の会員サイトで「今月はシルバーランクです」のように、購入金額に応じてランク付けをしているサイトも少なくありません。これもサンクコスト効果を利用したマーケティング戦略の一環です。

「あと1万円でゴールド会員になれる」「ゴールドになれば送料が無料になる」といった情報に紐付けられると、「あと数百円でランクアップするなら、一緒に予備用も買っておくか」「ゴールド会員の権利が維持できるから、買い物はこのサイトに限定しよう」といった気持ちを抱きやすくなります。

特に期限付きのポイント制などの場合、「20日までに買い物しないと、これまでのポイントが失効になります!」といったメールが届くと、サンクコスト効果がはたらき、ポイントを失効させないための購買活動につながります。

サンクコストについて理解し、マーケティングへの活用を

これまで紹介してきたように、「もったいない」と思ってしまう人間にとって、サンクコスト効果は日常のいたるところで影響を及ぼします。

投資したお金がもったいない、費やした時間がもったいないといった気持ちは誰にでも起きるものであるからこそ、ビジネスシーンで幅広く応用することができます。

マーケティング戦略の一環として活用するためには、ユーザーの「もったいない」という心理を刺激し、サンクコスト効果を喚起させることが成功のポイントになります。

店舗の売上を向上させるためには、定期購読の付録の例やポイント制の導入などを参考に、サンクコスト効果をビジネスの中に取り込んで、消費行動に影響を与えることが重要です。

提供元・口コミラボ

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