若い世代を中心に「非婚主義」を支持する動きが拡大

非婚支援金制度が導入された背景には、「非婚主義」という言葉が韓国で定着しつつあり、若い世代を中心に非婚宣言をする人が増えたことがある。「未婚」とは異なり、自分は結婚しない生き方を選ぶとの意志を示すもの。この傾向は女性に多く見られ、結婚後の育児や家事、キャリア維持の難しさ、儒教思想に基づく婚家への気遣いなど、男女間の格差が理由として挙がっている。男性も熾烈な受験戦争や雇用の不安定、住宅価格の高騰などが結婚のハードルになっているという。

その中でLGユープラスは独身者を差別せず、既婚者と同じ福利厚生制度の恩恵を提供する必要があると判断。結婚に対する考え方や選択肢が多様化していることから、従業員の価値観を尊重すべきという結論に至った。韓国では同社だけでなく、百貨店など他の大手企業にも非婚支援金制度が広がりつつあるようだ。

韓国や日本ではすでに未婚率が上昇

非婚宣言をする人の増加を裏付けるように、韓国では未婚率が上昇している。

韓国統計庁によると、婚姻件数 は2012年から10年連続で減少し、2021年は前年比9.8%減の19万3,000件に落ち込んだ。20万件を下回ったのは、1970年の統計開始以来初めてだ。統計庁は減少の理由として、30代人口の減少や未婚男女の価値観の変化などを挙げている。

また同庁の「2022年社会調査結果」 によると、「結婚しなくても構わない」「すべきではない」と考えている人が46.8%と約半数に。一方で、結婚すべき」と考える人の割合は2年前より1.2ポイント減り、50.0%にとどまった。10代(13~19歳)で「結婚すべき」と答えた人の割合は、約29.1%とかなり低かった。

韓国と同様に、日本でも生涯未婚率は年々増加している。内閣府が2022年6月に発表した直近の国勢調査 による2020年の生涯未婚率(50歳時未婚率)は男性28.3%、女性17.8%。5年前の2015年と比べて男性は3.5ポイント、女性は2.9ポイント上昇している。

まとめ

では、日本にも非婚支援金制度が導入される可能性はあるのだろうか。

日本実業出版社の調査 によれば、日本で結婚祝い金を導入している会社は全体の97.7%に上り、社会に定着した制度となっている。ただし相場は3~5万円で、LGユープラスの非婚支援金に比べればかなり少額といえる。仮に日本に導入されたとしても、韓国のような手厚さは期待できない。

また、日本の年間出生数は昨年初めて80万人を割り、厚生労働省の発表 によると2022年の出生数は79万9,728人とさらに減少した。「異次元の少子化対策」を唱えて出生数増加に邁進する政府の動きを見る限り、少子化に直結する「非婚化」を政府が支援するとは考えにくい。企業の立場や社会の風潮を鑑みても、非婚化支援は現在の日本では馴染みにくい施策といえるだろう。

執筆・渡辺友絵

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