物価の高騰が続く中、学費や教育費も追随する形で高騰している。国立大学の年間授業料は、1989年では約34万円だったが、2022年度では約54万円。私立大学の授業料の平均額は、約57万円だったものが100万円近くまで上がっている学部もある。朝日新聞と河合塾による共同調査「ひらく 日本の大学」によると、今後、中長期の見通しとして、回答した私立大学のうち22%が、学費を値上げする方向にあるようだ。そこで今回は、教育費破産の実情や教育費破産を起こすかもしれない家族の特徴などを紹介しよう。

高所得者でも起こり得る教育費破産とは?

そもそも教育費破産とは、塾や習い事、学費などの教育費がかさみ、家計が圧迫されることを指す。家計が圧迫されることで、結果的に破産してしまう家庭もあるほどだ。

実際にあった事例を紹介しよう。子どもが3人いるある家庭では、子育て資金や教育費の負担が大きかった上に、住宅ローンもため、生活費が不足した。生活費を補てんするために借り入れを行った結果、返済に行き詰ったそうだ。

他にも、塾や習い事を複数掛け持ちし、中学受験などを行うことで、教育費の家計に占める割合が大きくなるケースもある。

世帯年収が日本の平均年収よりも多い家庭であっても、資金計画が無計画であればあり得る話だ。世帯主が定年を迎えるなど収入が落ち込む時期と大学進学時期が重なり、収入と支出のバランスが崩れて多くの借金を抱えてしまうケースが考えられる。

奨学金を得ても借金が残る……

そこで、親の収入や貯蓄を頼らず進学する方法として奨学金がある。大学で受けられる奨学金の基準や奨学金で考えられる問題点を考えていこう。

大学で受けられる奨学金の基準とは

奨学金は誰でも受けられるわけではなく、奨学金の種類によってさまざまな基準が設けられている。例えば、大学(在学採用)で受ける第二種奨学金の家計基準を見てみよう。ちなみに、2021年の民間給与実態統計調査を見ると、給与所得者の平均給与は443万円だ。

国公立大学在籍者が自宅から通学する場合の基準給与収入の目安は、以下の通りである。

世帯人数 給与収入
2人 1,039万円
3人 1,012万円
4人 1,096万円
5人 1,314万円

自宅外から通学する場合は以下の通りだ。

世帯人数 給与収入
2人 1,086万円
3人 1,059万円
4人 1,143万円
5人 1,408万円

自宅外から通学すれば、給与収入の基準が高くなるため、奨学金を受けられる人の幅は広くなる。独立行政法人日本学生支援機構が2022年に発表した「令和2年度学生生活調査結果」によると、調査対象のうち49.6%が奨学金を受給している。

日本の奨学金は貸与型

世帯年収が多くなるほど、奨学金の受給者は減っている。しかし、日本の平均給与から考えると、教育資金を計画的に用意するか奨学金を検討しなければ、大学への進学は厳しいかもしれない。

ただし、日本の奨学金には問題点もある。それは、日本の奨学金に貸与型が多い点だ。貸与型の場合、借りたお金は返済しなければならない。親が子どもに代わって返済もできるが、大学資金の捻出が難しい家庭の場合は、子どもが就職したあとに返済していくことになる。

返済期間が30年の場合もいる。自分の生活と奨学金の返済を行うと、自由に使えるお金が少なく、生活費の確保が厳しいと感じるケースもあるだろう。

教育費破産する家族の特徴3選

教育費破産にならないために、教育費破産をする家族の特徴を知っておこう。

教育熱心すぎて習い事の掛け持ち

大切な我が子だからこそ、さまざまな経験をさせたり教養を身につけさせたりしたいと思うものだ。「子どもの将来のために」や「周りの子どもが通っているから」と教育熱心になりすぎて、習い事を複数掛け持ちさせる人もいる。

周りの意見に左右され、親の考えで習い事を選択していると、本当に必要な習い事なのかの判断ができず、不要な教育費を支出することになるだろう。

合格をつかむために……中学受験での課金

大学受験や大学進学に教育費がかかると考える人もいるかもしれない。しかし近年は、小学受験や中学受験も活発だ。小学受験や中学受験のために塾通いを始めると、大学進学のためにかかる費用に加えて、さらに教育費がかかる。

「なんとか合格させたい」という気持ちが先立って、夏期講習や冬期講習などの塾の課金が止まらなくなる人もいるようだ。そうなると貯蓄が減ってしまい、中学受験に成功しても学費が支払えないケースや、借金が増えるケースもある。

不安を払拭するために、塾を掛け持ちさせたり受講する講習を増やしたりする気持ちは理解できるが、そういうときこそ冷静な判断が必要だろう。

教育費の捻出に夢中で老後について無計画

人生100年時代と呼ばれるようになり、老後の人生が長くなっている。子どもの進路も大切だが、子どもに迷惑をかけないように老後を過ごそうと思うと、老後資金の確保も必要だ。

教育費資金の捻出ばかりに意識がいき、ライフプランがしっかりできていないと老後に破産する可能性も出てくる。

教育も家計もバランスが大切

親の立場から考えれば、「自分が子どもの頃にしたかった習い事だからさせたい」や「よい大学に行ってほしい」などの願いがあるために、子どもの教育費が大きくなりがちである。

しかし、身の丈に合っていない教育費の支出は、いずれどこかで調整が必要になり、結果的に子どもを苦しめてしまうことも。教育費破産しないためにも、ライフプランをしっかり考え、教育費と家計とのバランスを考える必要があるのだ。

文・山村望愛

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