ファーラン・マリやダン・ヘンリーなど、どちらかというと海外のマイクロブランド(小規模な時計メーカー)が好んで使う、セイコー製メカクォーツクロノグラフムーヴメント。それを搭載したちょっとツウ好みのレトロ顔クロノグラフウオッチを3モデル取り上げてみたい。
そして今回は見出しにも書いたように“レトロ顔”として二つ目クロノグラフのVK64というムーヴメントを搭載したものを選んでみた。二つ目とは文字盤上に設けられたインダイアルの数である。これは何かというと、9時位置側にストップウオッチで計測した際に何分経過したかを記録するための積算計。3時位置側には、VK64の場合は現在時刻の午前・午後を判別するための24時間計のインダイアルが装備される。なお、三つ目のクロノグラフ、VK63の場合はこれらに秒針(秒表示)にあたるスモールセコンドのインダイアルが加わる。

機械式のロノグラフウオッチが活躍した1940年代は主にこの二つ目クロノグラフが主流だった。しかしその後にさらに長い12時間までを記録できる時積算計のインダイアルが追加された三つ目クロノグラフが登場。それ以降、クロノグラフウオッチと言えば長時間計測できる三つ目が主流となったことから、近年二つ目は見た目に古典的な雰囲気を強調するためのデザインとして採用されることのほうが多い。今回はそういう意味で二つ目を選んでみたというわけだ。
さて、冒頭に触れたメカクォーツと呼ばれるクォーツ式クロノグラフムーヴメントについても簡単に触れておきたい。
まず知っておいてもらいたいのが時分針と同軸にある赤い針(写真参照)。これは秒針だと勘違いされる方も多いが、実は秒針ではなくクロノグラフ秒針と呼ばれるものだ。そのため通常は止まっていて、ストップウオッチのスタートボタン(2時位置)を押すことで初めて動き出すという計測針である。

そしてメカクォーツの場合は、これがクォーツ式特有の1秒毎に運針するステップ運針ではなく、機械式のように細かに針が動いて切れ目なく滑らかな運針に見えるスイープ運針するというのが大きな特徴だ。 しかも、クロノグラフ秒針をゼロリセットする際も機械式時計のように瞬時に帰針する。これもセイコーインスツル製の特筆すべき点と言える。
つまり、とても高額な機械式クロノグラフウオッチのちょっとした雰囲気を5万円前後のクォーツでも楽しめるというのが最大のポイントというわけである。
冒頭で触れたように海外で注目されたため時計好きの間ではよく知られているこのメカクォーツだが、なぜか日本で流通している商品で搭載しているものとなるの、セイコー自体が製品化しているものを除けばおそらくは10種類もないのではないか。しかも、レトロ顔で5万円前後の価格で買えるものとなるとさらにごく限られてしまうようだ。というわけで今回は次の3モデルを紹介する。
【アンダーン|アーバン ヴィンテージ サーモン】

パーツを自由に選び組み合わせることで自分だけのオリジナルウオッチが作成できるカスタムウオッチを展開する“アンダーン”。加えて同社の特徴となっているのが時計好きを魅了するアンティークスタイルのデザインだろう。
2022年の新作としてリリースしたこのモデルは、アンティークウオッチの世界で人気の高い“サーモンダイアル”と“ブレゲ数字インデックス“を組み合わせることで、機械式時計黄金期とされる1940年代の手巻きクロノグラフの雰囲気を表現。同心円の装飾を施したインダイアル、繊細な縦の筋目を入れた文字盤、同心円の筋目を入れた外周のミニッツサークルと、細部にわたる丁寧な作り込みが徹底されている。そのため40年代当時のパテック フィリップやモバードが製作したアンティーククロノグラフの名作を思わせる、古典的な風合いが楽しめる。
アンダーン
undone.co.jp/collection/detail/urb-vnt-slm
【イエマ|ラリーグラフ クォーツ】

“YEMA(イエマ)”は、スイス国境に近いフランスのブザンソンで1948年に創設されたフランスを代表する時計ブランドのひとつ。60年代に当時としては驚異的なスペックである300m防水のダイバーズウオッチ“スーパーマン”、レガッタタイムを搭載した200m防水のクロノグラフ“ヨッティングラフ”など、ブランドアイコンとなるモデルを次々とリリースし、スポーツウオッチの分野でフランスを代表するブランドとなった。
そしてこのモデルは、1974年にリリースされて人気を博したレーシングクロノグラフ、“ラリーグラフ”をベースに製作されたものだ。レーシングカーのダッシュボードから着想を得たという台形のインダイアルは当時のオリジナルと同じデザインで独特の個性を放つ。まさに70年代を彷彿とさせるこのレトロモダンなデザインがほかにはないこのモデルならではの魅力と言えるだろう。
タイムギアオンラインショップ
timegear-onlineshop.com/?pid=150126272
【アウトライン|パイロットクロノ 20th リミテッド】

時計専門誌の総編集長が展開する時計ブランド“アウトライン”。2022年新作としてリリースしたこのモデルは1940年代に空軍士官向けに開発された“フライングオフィサー”名でよく知られる二つ目クロノグラフの名機をベースに再現したものである。当時のフライングオフィサーはクロノグラフ機能のほかに時差を確認することができるように文字盤外周に世界23都市の名前が時差に応じて配されるという特徴をもっていた。
このモデルは、時差だけでなく同時に二つの国の時刻を表示できるように作り変えているところがポイントだ。そしてそれは日本の時刻(ホームタイム)を基本として、12時間表示のベゼルを回転させて「12」を都市名に合わせるだけで、その都市の時刻も確認できる。つまりクロノグラフに加えてデュアルタイム機能を付加している点が大きな魅力となっている。
アウトライン公式WEBサイト
文◎堀内大輔(編集部)
提供元・Watch LIFE NEWS
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