欧州発のDPP

-----先程ご説明いただいたDPPは、日本ではまだ聞きなれない言葉だと思いますが、日本ではすでに代替されているものがあるのでしょうか。

中谷:日本ではこれまでも製造業・ものづくりにおいて、必要な情報はきちんと見てきました。

例えば、製品の製造過程で「品質は基準に達しているか」「有害物質が含まれていないか」「製品の輸出時には」「その国の規定に合わせて作られているか」などを確認するようなプロセスが組み込まれています。

一方で、それらの過程で取られた情報が一元的に集約されていない点は課題であると考えています。特に、リユースやリサイクルなど、製品ライフサイクル全体での生産性向上を考えると、材料や有害物質に関する情報が、再資源化事業者にも開示されていることが重要です。

DPPは「製品情報を一つにまとめていき、誰でも閲覧できるようにして活用していこう」というコンセプトであり、企業をまたいだ情報連携が、今後の製造業において重要になるのではないかと思います。

岡村:ドイツでは、自動車産業において企業間で情報連携をするためのアライアンスとしてCatena-X(カテナエックス)が設立されましたが、Catena-XはDPPになるのでしょうか。

中谷:そうですね、Catena-X*3は、DPPを実現する枠組みの一つと捉えられると思います。

欧州では、バリューチェーン全体でデータを共有するためにGAIA-X(ガイアX)という取り組み、ルール作りが進んでおり、その自動車業界版として2021年に「Catena-X(カテナ-X)」が設立されました。

自動車におけるライフサイクルに関する情報が、すべてCatena-Xに集約されるようになると、DPPの実現も容易になりますし、CO2削減や資源循環率の向上といった持続可能な社会づくりに必要な取り組みをしやすくなるのではないでしょうか。

*4…Catena-Xとはカーボンニュートラルに向け、自動車業界において、安全な企業間のデータ交換を目指すアライアンス。ドイツのBMWグループとメルセデス・ベンツが2021年に設立。企業間でデータをつなぐことにより、自動車のバリューチェーン全体での効率化、最適化、競争力の強化、持続可能なCO2排出量削減などの実現を目指す。自動車メーカー、自動車部品メーカーなどの自動車産業だけでなく、アプリケーションベンダーやプラットフォームベンダーなどさまざまなプレイヤーが参加している。


対談者プロフィール

岡村知暁

株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジー

シニアマネージャー

SOLIZE株式会社(旧株式会社インクス)の業務変革コンサルタント、大手外資系の総合コンサルティングファームのサステナビリティ経営コンサルタントを経て、2022年8月からGPTechに参画。GPTechでは、IT調達支援などのプロジェクトを実施しつつ、ITプロジェクトのノウハウを活用した新サービス「脱炭素経営支援サービス」の立ち上げや、IT×サステナビリティ領域におけるサービス企画・開発も行っている。



対談者プロフィール

中谷元

株式会社digglue

代表取締役COO

SOLIZE株式会社(旧株式会社インクス)の業務変革コンサルタントとして、製造業(自動車、精密部品、重工業など)や金融保険業を中心に変革を起こす。2018年にCEO 原とdigglueを設立。コンサルタントとして現場オペレーションをしつつ、サーキュラーエコノミー実現に向けた事業を開発している。

Twitter:https://twitter.com/h_nakata2



企業紹介

■株式会社グローバル・パートナーズ・テクノロジー

「この国のシステム発注の常識を変える。」を経営理念に掲げるコンサルティングファーム。ITユーザー企業における人材・知識・体制不足の課題にフォーカスし、ITユーザー企業の体制強化に特化したCIOアウトソーシング事業を展開。発注者の立場から経営戦略をベースにしたIT戦略を立案し、IT投資の効果を最大化する。2022年10月より、中堅上場企業を対象にした「脱炭素経営支援サービス」の提供を開始。

コーポレートサイト:https://gptech.jp/

■株式会社digglue

「テクノロジーで持続可能な世界を実装する」をパーパスとする日本発の資源循環クリーンテックスタートアップ。ブロックチェーンの開発・実装技術と、あらゆる現場に入り込み業務プロセスを可視化するコンサルティングに強みを持ち、現在、プラスチックの資源循環を推進するプロダクト「MateRe(マテリ)」を開発中。

コーポレートサイト:https://digglue.com/



著者プロフィール

草彅萌生

2022年にdigglueへ新卒で入社。マーケティング・広報を担当。