CE最先端の欧州と日本の違い

-----日本と欧州を比較すると、サステナブル活動にはどういった違いがあるのでしょうか。

岡村:欧州では、政府支援も含め、長期的なプロジェクトに対し投資する文化が日本よりも強いのではないでしょうか。

例えば、ドイツのゾネン社のVPP*1事例は非常に面白い取り組みだと記憶しています。太陽光による電力の蓄電池システムのサプライヤーであるゾネン社は、将来的なVPP見据え、自社発電所(バイオマス発電所)を保有したうえで、VPP事業に向けたコミュニティ構築の取り組みを始めました。

通常、家庭用太陽光だけでは一軒当たりの発電量が多くないため、コミュニティが大きくなるまでは電力供給が安定せず、VPPの事業化は困難です。しかし、ゾネン社は発電量を調整可能な自社のバイオマス発電設備を持ったことで、契約ユーザーに安価かつ安定的に電力を供給できるようになりました。

その結果、経済合理性の観点から、当該コミュニティに参加するユーザーが自然と増え、コミュニティが拡大し、電力会社に対しアンシラリーサービス*2を提供することが可能になります。

この事例では、コミュニティが拡大するまでは事業化が難しいVPPに、長期的な視野で取り組んだからこそ実現できた事例の一つではないでしょうか。*3

中谷:そういった動きが欧州ではあるのですね。先日、NTTドコモがWeb3領域に6,000億円を投資することを発表しましたが、日本でも企業が将来を見据えて大きな投資をするような動きが少しずつ始まってきたとプラスに捉えていいということでしょうか。

岡村:トヨタも、モノやサービスがつながる実証都市「Woven City」の建設に静岡県で取り組まれていますよね。

私も日本産業をリードする超大企業によるこうした取り組みは、多くの企業が長期的なプロジェクトに投資していくための一つのきっかけになるのではないかと期待しています。

*1…仮想発電所・バーチャルパワープラントのこと。工場や家庭などが保有する小規模のエネルギーリソースを、IoTを活用したエネルギーマネジメント技術によって束ね、遠隔・統合制御することで、電力の需給バランスを調整する(経済産業省 資源エネルギー庁より)。

*2…「補助的な」という意味があり、電気事業の主たる電気エネルギーの供給に対して、それを確実に行うため、エネルギー供給には直接結びつかない諸々の補助的なサービス。

*3…独ゾネン社のビジネスモデルなどは、こちらをご参照ください。