3回目は、GMTマスターのRef.1675である。ファーストモデルの弱点でもあったアクリル製ベゼルインサートを、耐久性の高いアルミ製へと置き換え、さらにリューズガード付きの新ケースを採用した第2世代だ。

 初出は1959年。これまで取り上げてきたエクスプローラー、サブマリーナー同様に自動巻きムーヴメントの傑作と呼ばれる1500系を搭載する。そのためいまなお普段使いすることもできるという点で、ぜひ手に入れておきたいヴィンテージの代表的モデルのひとつである。

 ご存じのようにGMTマスターは国際線パイロット向けに時差のある二つの国の時刻を確認できる実用時計として開発された。そのため主なターゲットが高所得層だったのだろう、このGMTマスターは最初からステンレススチール仕様とイエローゴールドの無垢仕様がラインナップされ、この第2世代からはそれらに加えてステンレスとゴールドとのコンビモデルもラインナップに追加されるなどバリエーションが多い点も特徴といえる。

ぜひ手に入れておきたいヴィンテージ [第3回]|GMTマスター、Ref.1675|ロレックス通信 No.176
(画像=ミラー文字盤に加えて1960年代に初期のほんの一時期にだけ製造された通称“ヒラメ”と呼ばれる薄型のリューズガードを備えた1963年製の超希少な1675。かなりの高額となる、『Watch LIFE NEWS』より 引用)

 さらにベゼルもGMTマスターのシンボルであり通称ペプシと呼ばれる青赤だけでなく、黒の単色や、ケース素材に合わせた茶の単色、茶金など数種類が用意されている点もこれまで取り上げたエクスプローラーやサブマリーナーと決定的に違う点だ。

 ちなみにこのベゼル、サブマリーナーに比べると比較的容易に取り外しができるため、アルミ製のツートンベゼルインサートの付け換えもどちらかというと簡単だ(と言っても傷を付けかねないためビギナーにはお勧めはしないが)。

 しかも、レアなもので100万円近いものもあれば純正の交換用であれば数万円からあるなど価格も種類も様々だ。そして何よりもベゼルの違いで見た目の雰囲気は大きく変わるため、気分に合わせてベゼルを付け換えて楽しむ愛好家は多く、この点も1675が人気を集めている理由のひとつと言えるだろう。

 1675は、80年頃まで約20年間も製造されたロングセラー。言い換えると現存数も多い。ただ人気の青赤ベゼルについては変色しやすいため、その色褪せた雰囲気も様々で、その色味によっても相場もかなり変わってくる。

ぜひ手に入れておきたいヴィンテージ [第3回]|GMTマスター、Ref.1675|ロレックス通信 No.176
(画像=交換用のベゼルインサートも数万円から流通していることに加えて、交換も比較的に容易なため自分で付け替えられる。この点もGMTマスターの楽しみ方のひとつとなっている、『Watch LIFE NEWS』より 引用)

 また、なかにはベゼルインサートが後年のものに交換されている個体もあったりするため注意を(その場合は売価が低く設定されていることが多い)。

 そこでこの点についてヴィンテージロレックスの修理を得意としている修理技術者のクロノドクター・久保氏に聞いたところ「いつ頃からなったのかは不明だがインサートの裏側が青であれば間違いなく交換用ということになる。ただ青でなくても年式によって使われている書体が決まっているため、個体年式と書体とでほとんど判断が付く」ということだった。ただ、ビギナーの場合は必ず専門店でそのあたりを確認して購入したほうがいいだろう。

 なお、エクスプローラー、サブマリーナー同様に同時期の1675は、1967年頃に光沢感のあるミラー文字盤から艶のないマット文字盤に仕様変更されている。これら初期製造分で特に、初代モデルのパーツを転用したと思われる“ミラー文字盤”や分目盛りが円を描くように外周に沿って線でつながる“ミニッツサークル”、そしてGMT針の三角マークが小さい“小GMT針”を備えた個体などは特に希少性が高くなり相場が一気に500万円超えになったりと跳ね上がるためコレクター向けとなる。そのため狙うのであれば当然マット文字盤ということになるだろう。

 現在の相場は170万円台ぐらいからで、200万円前後が中心といったところだろうか。現行モデルの黒青ベゼル(通称バットマン)や青赤のペプシベゼルがリバイバルされたことで、一躍人気モデルの筆頭に挙がる存在となったいまでは、1675も同年代のサブマリーナー以上になってしまった感は否めない。

提供元・Watch LIFE NEWS

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