中国経済への依存度が高いアメリカのハイテクセクター
中国経済の中で循環しているマネーサプライM1の伸び率が高くなると、約1年のタイムラグを置いて、アメリカのハイテクセクターの収益が向上する傾向があります。
過去2年ほど、中国のM1伸び率はプラスマイナス3~4%の範囲内で推移してきました。
経験則から言うと去年は約30%、今年も約12%伸びていたアメリカハイテクセクターのEBIT(税・金利負担控除前営業利益)は、2023年には減少に転落する可能性が高いことになります。
なぜこの経験則が通用するかというと、アメリカのハイテクセクターは中国での売上が総売り上げに占める比率が約8分の1と非常に高く、しかも中国での売上は中国のマネーサプライが大きく伸びているか、あまり伸びていないかに依存するからです。
なぜ中国ではアメリカのハイテク企業の製品の売れ行きがいいかというと、たんに人口が多く都市圏ではそこそこの所得を得ている分厚い購買層が存在しているというだけではありません。
他の先進国や新興国に比べて、さまざまな製造技術の中でも微細化技術で決定的な遅れがあり、自国内で消費するICを自国メーカーの生産量では賄いきれないという事情も加わってきます。
アメリカのハイテク企業の下請けをしている中国の製造業者の大部分が、ブランドイメージを別にすれば性能的にはそこそこの類似品を造るという能力を持っていないので、アメリカからの輸出が安定したシェアを確保しているわけです。
アメリカのハイテク企業から見れば、中国の製造業者は基幹技術でかなり劣るので、各種の工程を下請けに出す際にあまり重要な技術の流出を気にしなくてもいいという安心感もあって、下請けにも使いやすいわけです。
しかし、アップルブランドの製品のうち約7割を実際に製造している台湾のフォックスコン(鴻海精密工業)が中国の鄭州市郊外に建設した巨大iフォン工場の全面ロックダウンと、その後の労働者のストによる機能停止は、iフォン全体の生産量をかなり大きく低下させるでしょう。
製品の買い手としても製造工程の下請け・孫請けとしての重要な役割を果たしている中国経済が深刻な危機に見舞われている今、アップルやアマゾンなどのアメリカハイテク企業の業績にも暗雲が立ちこめています。
11月30日の寄り付き前の時間外取引では、前日悲観的なコメントを出したアマゾンとともに、アップルの株価もダラダラ下げを演じました。