近代建築の巨匠が着想のヒントを得た建物

ムザブのもう一つの村として知られる、エル・アーティフへ。こちらも「顔役」との同行が必要です。フランス語が分かることから、「パリジャンさん」とのあだ名の顔役が同行してくれます。アルジェリアでは今でも年配の方を中心にフランス語を話す方も多く、パリジャンさんもそのなかのひとり。そのエル・アーティフの城壁外にある「シディブラヒム・モスク」は、ル・コルビュジェが着想のヒントを得た建物され、彼の後期の傑作でありフランスにある「ロンシャンの礼拝堂」に影響を与えたと言われています。

今でも祈りが捧げられているモスクは、流浪の末に砂漠のオアシスにたどり着いた、人びとの熱き信仰心に支えられた、700余年の歴史を有する建物で、イスラム教の学者「シディブラヒム」の名前が付けられています。小さなモスクですが摂氏40℃を超える、夏の砂漠の暑さを凌ぐための白く厚い壁と、優美な曲線が印象的で、建物内部の天井や支柱はナツメヤシの木で作られています。
世界の各地には豪華絢爛で壮大なモスクはありますが、シディブラヒム・モスクは実に質素で小さい建物です。その小さな建物が近代建築の巨匠ル・コルビュジェに影響を与えたと思うと感慨深く、また90年近く前に首都アルジェから南に600kmも離れたオアシスを訪れる、彼の建築に対する情熱を垣間見た気がしました。

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ぜひいつかアルジェリアへお出かけください。
文・写真・山田タラ/提供元・たびこふれ
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