EU内相理事会に先立ち、セルビアの首都ベオグラードで16日、オーストリア、ハンガリー、セルビア3カ国の首脳会談が開催された。3国サミットの目的は、不法移民との戦いで強力な軸を形成し、国境保護のための措置を共同で講じることだった。
オーストリアのカール・ネハンマー首相、セルビアのアレクサンダー・ヴチッチ大統領、ハンガリーのヴィクトル・オルバン首相の3首脳は3国間の移民対策で協力を強化することを目的とした「了解覚書」に署名した。その目的は、不法移民、テロ、組織犯罪と戦うことだ。また、難民と移民の明確な区別だ。
ネハンマー首相は「EUの移民対策は失敗した」として、難民旅行者を拒否すべきであり、経済難民はジュネーブの難民条約に合致しないと主張。ハンガリーのオルバン首相も、「移民は管理すべきではなく、防止すべきだ。我々はセルビアと運命を共にしている」と指摘、「不法移民の阻止はわれわれが生き残るための問題のため、3国は協力が不可欠だ」と述べている。
参考までに、難民対策では加盟国内でも対立が表面化している。例えば、フランスとイタリアの両国は難民受け入れを巡り、対立している。イタリアが最近、救助船の入港を拒否したため、パリ政府は激怒し、「救助船には最寄りの港に行く権利がある」と抗議。それに対し、イタリアは「難民対策における他のEU諸国の連帯が不十分だ」と批判している、といった具合だ。なお、スキナス副委員長はEU域外での難民受け入れセンターの設置案には懐疑的だ。
バルカン半島は歴史的にロシアの影響圏に入る。同時に、ロシア正教会と繋がりのある国が多い。EUの西バルカンルートへの行動計画が難民殺到を阻止できるか否か不確かだ。「欧州に難民を殺到させ、欧州の政情を不安定にする」と豪語したロシアのプーチン大統領の脅迫がここにきて不気味さを増してきている。

オーストリアの首都・ウィーン CHUNYIP WONG/iStock
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年11月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。