前回のたびこふれでご紹介した「世界遺産チャンチャン遺跡」。ペルー北部海岸エリアに栄えたチムー王国の首都遺構にして、古代アンデス文明最大の規模を誇るアドベ(日干しレンガ)造りの巨大遺跡です。今回はその遺跡を見学した後にぜひ訪ねてほしい「Museo de Sitio de Chan Chan(チャンチャン遺跡附属博物館/以下:チャンチャン遺跡博物館)」をご紹介します。
目次
博物館の入場券はチャンチャン遺跡と共通!
偉大なる王が築き上げたチムーの豊かな文化に触れる
博物館の入場券はチャンチャン遺跡と共通!

チャンチャン遺跡博物館は遺跡入り口から約2km、トルヒーヨ市内と空港方面を結ぶ「Av. Mansiche(マンシチェ通り)」沿いにあります。歩くにはちょっと離れていますが、博物館の入場は遺跡との共通券になっているので利用しない手はありません。市内発のツアーに参加する場合は、博物館の見学が含まれているかどうか事前に確認しておきましょう。

チムー文化がテーマのチャンチャン遺跡博物館ですが、チムー以前にこの地に栄えた「クピスニケ」「サリナル」「ガジナソ」「モチェ」という4つの文化についても簡単に紹介しています。この迫力のある巨石像(レプリカ)は、クピスニケ文化の「ワカ・デ・ロス・レジェス遺跡」のもの。紀元前1500年~同500年にかけて栄えた古代文化です。

こちらは海岸部に生息するキツネを模したサリナル文化の土器。なんとも言えぬ表情をしていますね。
偉大なる王が築き上げたチムーの豊かな文化に触れる
ここから先は、チムー文化とチャンチャン遺跡についての展示エリアです。モチェ文化が滅んでしばらくたった後の、紀元900年ごろに興ったチムー文化。しかし最初の数百年はモチェ谷周辺に暮らす小さなグループにすぎませんでした。1300年ごろになって、後に「大チムー」と称されるタイカナモ王が登場。彼の時代からチムーは急速に成長し、王国としての体制を整えていきました。
※多くの文献ではTacaynamo(タカイナモ)と紹介されていますが、ここではチャンチャン遺跡博物館内の表記に合わせTaycanamo(タイカナモ)としました。

こちらは「イドロ」と呼ばれるチムー文化の木製像です。

チムーの豊かな食文化を表す土器たち。写真手前の四角いところは、なんと畑の畝の形を表したもの。貴重な水資源を無駄にしないよう計算されているそうです。灌漑技術に優れていたチムーの人々は、河川の水や地下水を利用して砂漠に水路を引き、さざまな農作物を栽培していました。その奥にはカボチャやトウモロコシ、フルーツなど大地の恵みを模った土器が展示されており、チムーの人々の豊かな食生活を窺い知ることが出来ます。

こちらはサメを模った土器。そのほかトトラと呼ばれる葦舟を巧みに操る漁師など、海に関する土器もたくさんありました。

死者にかぶせていたという合金のマスク。チムーの人々は金属加工の技術にも秀でており、歴代の王たちは金銀製の王冠やマスク、鼻飾りなどを身に着けていました。1470年にチムーを征服したインカ皇帝トゥパック・ユパンキは、チムーの彫金師や金属加工技術者をクスコに移住させ、自分たちの文化に取り入れていきました。後に「黄金帝国」と称されるインカですが、その技術はチムー文化から伝わったものなんですね。

偉大なるチムー王、タイカナモ。彼は木製の輿に乗って海から現れたと伝えられています。

タカイナモ王と家臣たち。王はどんな言葉を告げているのでしょうか。