冬は新型コロナウイルスなどの呼吸器感染症の脅威が高まる。ウクライナ国民の大部分が十分に免疫を持っていないと予想される。また、石炭や木材、または発電機を使用した代替暖房に頼ることになるため、子供、高齢者、呼吸器疾患や心血管疾患を持つ人々に有害物質による健康上のリスクが出てくるだけでなく、事故による火傷や怪我を引き起こす危険性が高まる。
ウクライナのエネルギー供給業者によると、国民は来年3月末までは停電が生じることを覚悟しなければならないという。電力会社「ヤスノ」の責任者によると、技術者は、冬が本格化する前に送電網の損傷を修復するために奮闘中という。
ウクライでの新型コロナウイルスの感染状況に関する正確なデータはないが、感染力のあるオミクロン株がこの冬、戦時下のウクライナで拡大する危険性が懸念されている。ウクライナ国民を対象としたPCR検査の実行は戦時下のウクライナでは難しい。一方、ロシア軍の攻撃を避け、本格的な冬の訪れの前にポーランドやバルト3国(エストニア、ラトビア、リトアニア)に避難する国民は再び増えるだろうが、コロナに感染した避難民が多数入国する状況が考えられる。そのため、ウクライナ避難民を迎え入れる側も大変だ。受入国でコロナ感染が拡大する状況になれば、ウクライナ避難民がスケープゴートとなって、「避難民の受け入れを制限すべきだ」という声が広がることが予想されるからだ。
【当方の嘆き】 地球に迫る小惑星の軌道さえも変えることが出来る科学技術を有する21世紀に生きる人類で、摂氏マイナス20度の寒さに震える国民がいるという現状は何を意味するのか。戦争を始めたロシアのプーチン大統領の責任は明かだ。ただ、それだけではないように感じる。地の富と恵みが公正に人々に分配されていないという、人類が久しく直面してきた根本的な欠陥が依然、解決されていないのだ。同時に、個人、民族、国家のアイデンティティを超克する“普遍的な真理”を人類はまだ見出していないからではないか。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2022年11月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。