次に上院。各州2議席の合計100ある議席の3分の1が2年毎に改選されるので、今回は35議席(一部補選者を含む)が争われた。改選前議席は50vs50だったが、改選議席の党派別内訳は共和党21vs民主党14と共和党が7議席多いので、共和党にとってハンデ戦だったと判る。

結果は共和党20vs民主党14と共和党が過半数を制した。残り1議席は、これも20年の大統領選でのトランプ電話事件で揉めたジョージアで、両者50%未満のため12月6日の再選挙となったので、目下は非改選と合わせ共和党49vs民主党50。ジョージアで共和党が勝っても50vs50となり選挙前と同数だが、フィリバスター(議事妨害)を避けるには60票必要なので、ジョージアは大勢に影響しない。

上院で21年のトランプ弾劾に賛成票を投じた共和党議員は7人だった。うち4人は今回非改選、2人は不出馬で、アラスカのマコウスキーだけが出馬し当選した。ペンシルベニアで不出馬のパット・トゥーミー後継で出たメフメト・オズが民主党ジョン・フェターマンに負けたが、予備選中に脳卒中に罹ったフェターマンの無残なTV討論が、却って判官贔屓票を呼んだ結果と筆者は見る。

最後は下院。2年毎に435議席全てを争うので、218取れば過半数を占めることになる。結果は共和党218vs民主党212(19日8時現在)と選挙前に比べ共和党+8、民主党-9となり、残り5議席を残して共和党の過半数が確定した。

下院共和党で21年のトランプ弾劾に賛成した議員は10人。うち8人は、4人が予備選敗退(1人はリズ・チェイニー)、4人が不出馬(1人はアダム・キジンガー)だ。チェイニーとキジンガーは1月6日の議事堂襲撃を調査する委員会の委員を務める。出馬したワシントン州4区のダン・ニューハウスは当選、カリフォルニア州22区のデビッド・バラダオも優勢(19日8時現在)だ。

トランプが強く推した下院候補は25人で、その勝敗は16勝8敗1優勢(19日8時現在)だ。予備選でチェイニーを破ったワイオミング全州区のヘイグマン、そして不出馬のキジンガーを継いだイリノイ16区のLaHoodは2人とも早々と当選を決めた。

有権者の意識としては、前評判が高い候補には「自分が投票しなくても当選するだろう」と投票意欲が減退する。『ニューヨークタイムズ』などの米国のメインストリームメディアが選挙前に盛んに「赤い波」が押し寄せると煽ったのは、こうした効果を狙ったものだろう。

共和党の改選議席の結果は、知事選は惜敗、上院と下院は勝利だった。特に下院はトランプ派候補が16勝8敗と健闘し過半数を制した。これはチェイニーが主導した「J6委員会」や司法省・FBIによるマーアラゴ急襲などの逆風が吹きながらも、米国民の多くが24年の「Make America great and glorious again」をトランプに託しているように筆者には見える。

そこに向けてのトランプ最大の課題はペンスとの和解だ。昨年1月6日の大統領選挙人による投票の議会合同会議で議長を務めたペンスは、初めてトランプに背いた。議長の権限についての憲法解釈の違いが原因だった。が、11月16日にペンスは、一度は怒ったトランプを「許す(Forgiveness is not optional)」と述べ、かつての上司に水を向けた。

トランプとペンスなら1期4年で、プーチンを鎮め、習近平と金正恩を黙らせ、シェールガスを増産してインフレを抑え、パリ協定再脱退とケリー気候皇帝更迭で過度な気候変動原理主義を排し、国境の壁によって不法移民を取り締まり、「1776委員会」を復活させて白人の原罪意識を宥めるだろう。

そして野にあるポンペオとニッキ・ヘイリーは重要閣僚に入り、まだ若いデサンティス知事やトム・コットン、ジョシュ・ホーリーらと28年を目指せば良い。斯くすれば、バイデン政権が失くしてしまった「偉大で光栄あるアメリカ」は取り戻せる。