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トルコ最大の都市イスタンブールで爆弾テロが発生した。トルコ当局は早速、クルディスタン労働者党(PKK)の犯行だと決めつけ、トルコをめぐる問題への理解に乏しい我が国のメディアもその発表を追認し無批判に垂れ流している。ある民放のニュース番組に登場した「トルコの専門家」は「PKKやクルド政党への締め付けが強まる中、対抗するためにテロを決行した」といった趣旨の噴飯ものの見解を披露していた。

テロが発生したイスタンブール中心部イスティクラル通filadendron/iStock

PKKなどへの締め付け強化は今に始まった話ではなく、「対抗」でテロを実行しても逆に追い込まれることにしかならないのは、専門家ではない素人でも分かることだ。PKKは、少なくともこれまで犯行声明を出した攻撃では、軍や警察を狙ったものしかない。過去には民間人の殺害を行っていたが、これもやはり当局の協力者などに的を絞ったものだった。

日本の事件報道と言えば、警察頼みと批判されているが、とはいえ、日本の警察発表に政治的思惑が絡むことはそう多くはないだろう。一方、トルコ当局が発表するのは、完全に政権の意に沿ったストーリーだ。今回も、PKKが関与したであろう状況証拠、また考えられうる動機を示していない。

実行犯として逮捕された女に関する説明は不可解だ。女は爆発物が入っていた荷物を現場に置いたとされる。当局は、手錠をかけられた女の写真を公開したが、なぜ捕まっているのか分からないといったような表情を見せていた。金正男暗殺事件で毒物をかけた女らと同じく、「これを置いてこい」と指示されただけのようにも見える。