ラムズフェルド米国防長官(当時)は朝鮮半島の衛星写真を見せ、24時間光に溢れている韓国と真っ暗闇の北朝鮮を示して、「民主主義と自由」が保障された世界と独裁社会の相違を誇示したことがあった。その朝鮮半島の夜間風景の写真を思い出した。そのコントラストは余りにも鮮明だから、政治家や経済学者が何千もの言葉を駆使して説明しなくても、南北間の実情は一目瞭然に浮かび上がった。

朝鮮半島の夜間衛星写真(2014年2月公表)=米航空宇宙局(NASA)提供
ただ、ここにきて朝鮮半島の写真に新しい解釈が生まれてくる。エネルギー危機の今日、夜は無駄な電力を使わず、消灯することは賢明だ。さまざまなイルミネーションで輝いている欧米社会の夜の風景は電力の無駄使いであり、環境にやさしくはない、といった解釈だ。金正恩総書記の号令の下、日が沈んで夜になれば早々と消灯している北朝鮮はエネルギー危機の現代、模範的な国家だ。朝鮮半島の写真はもはや「繁栄」と「貧困」のコントラストではなく、(エネルギーの)「浪費」と「節約」のコントラストというのだ(北の国民が電力不足下で厳しい生活を余儀なくされている問題はここでは扱わない)。
ロシアのプーチン大統領が2月24日、ウクライナにロシア軍を侵攻させて以来、ウクライナを含め欧州全土は程度の差こそあれ、戦時下に陥っている。プーチン氏が天然ガスなどエネルギーを武器に利用して欧州諸国に圧力を行使して以来、欧州はエネルギーのロシア依存からの脱却が急務となってきた。ただ、ロシア産のエネルギーを断念して直ぐに他の再生可能なエネルギーに変えることは難しい。そこで欧州の指導者たちは国民にエネルギーの節約、無駄使いの是正を呼び掛けているわけだ。11月に入り事務所の暖房の設定温度を20度以下に抑えるオフィスも出てきた。すると「寒いから風邪をひく」といった苦情が社員から聞かれる、といった具合だ。