10月16日から22日までの7日間、北京で「党大会」が行われました。

党大会とは、5年に1度開かれる、中国共産党の指導体制や重要政策を決める最高意思決定機関です。党大会は国会にあたる「全人代」よりも上位に位置しており、中国で最も大きな政治イベントと言えます。

今回の党大会では、10年間続いた習政権の路線を継続することが明確に示されました。

「異例の3期目」へと突入する習近平主席の今後の政権運営にとっても、大きなマイルストーンとなります。

目次

国内政治:習一強体制
経済:「ゼロコロナ政策」で苦境か
外交:台湾有事の可能性高まる
コロナ政策:「ゼロコロナ政策」継続か
インバウンド観光に与える影響は

国内政治:習一強体制

国内政治においては、習近平主席への権力集中がより一層強化されました。

習主席の過去5年間を振り返りでは、「腐敗排除」の成果が強調されました。この「腐敗排除」は、習主席にとっては、政敵排除と表裏一体です。この5年間で習主席の権力はさらに強まった格好です。

一方で"政敵"も増えているという指摘もあります。しかし今回の党大会で、序列3位の栗戦書・全人代常務委員長や7位の韓正副首相ら非主流派の複数の「長老」が政治の第一線から退き、3期目に向けて習主席の権力地盤が確立されています。

さらには長年首相として習政権を支えてきた李克強氏が最高指導部を退任しました。

来年3月に首相を退任することは憲法規定によって定められていましたが、最高指導部には残るとの見方もありました。李克強氏は習主席との溝を指摘されており、彼の退任は習氏への権力集中を象徴していると言えます。

また胡錦涛前総書記が閉幕式で途中退席させられました。これは極めて異例なことです。

新華社通信は体調不良のためだと報じましたが、胡錦涛氏が自らに近い李克強氏を外す党人事に不満があったのではないかなど、さまざまな憶測がなされています。

一方で王毅氏など、習主席の側近は指導部に残りました。

このように今回の党大会では、習主席の一強体制が構築されたと言えます。

経済:「ゼロコロナ政策」で苦境か

経済では、「共同富裕」がスローガンとして前面に打ち出されました。共同富裕とは、格差是正のことです。広がりすぎた貧富の差を解消しようとする意図があります。

一方で「改革開放」は陰に隠れた印象で、習主席には今までのスローガンから離れ、独自路線をアピールしたい狙いがあると思われます。

とはいえ、足元の経済状況はかなり苦しいのが現状です。

ロックダウンも辞さない「ゼロコロナ政策」は、経済に悪影響を及ぼしています。

実際に18日に発表を予定されていた7~9月のGDPの発表が突然中止になりました。また9月の工業生産、固定資産投資、不動産開発投資、小売売上高の発表も延期されました。

さらに党大会では具体的な経済成長の数値目標はありませんでした。

日本経済新聞社と日経QUICKニュースが調べた市場予測では、通年での政府目標の「5.5%前後」を大きく下回る公算で、現在の中国経済はかなり苦しいのかもしれません。

外交:台湾有事の可能性高まる

外交では「一帯一路」の継続・強化が示されました。一帯一路とは、アジア・ヨーロッパ・アフリカにまたがる巨大経済圏構想のことです。

中国・中央アジア・ヨーロッパを陸路で結ぶ「一帯」、中国・東南アジア・アラビア半島・アフリカ東岸を海路で結ぶ「一路」のどちらも抑えることが狙いです。2013年に習主席が提唱し、すでにアフリカや東南アジアの途上国を中心に約140カ国と協定を結んでいます。

今後も「一帯一路」構想を強力に推進し、途上国への影響力を増したい狙いです。

またアメリカ・台湾への強硬姿勢も継続する構えを見せました。

アメリカに対しては、「覇権主義」に対抗する姿勢を明確に示し、アメリカの姿勢を批判しました。

台湾に対しては、台湾統一を必ず実現するとし、武力行使も辞さない姿勢を改めて示しました。

党規約に台湾独立反対が盛り込まれました。また一国二制度を進める方針も明記されました。これまでは台湾との祖国統一が書かれていましたが、より強い表現に改められました。

習主席は、演説で何度も「海軍」について言及しました。中国海軍は急速に戦力を拡充しており、アメリカ、台湾、そして日本にも圧力をかけています。

このような強硬姿勢に対して、アメリカは反発しており、すでに台湾への防衛戦力の引き渡しを検討しているようです。

今後も米中対立は深まる見通しで、日本との関係も予断を許しません。

コロナ政策:「ゼロコロナ政策」継続か

コロナ政策は、引き続き「ゼロコロナ政策」を行うことが濃厚です。

ゼロコロナ政策は経済への悪影響や市民生活の不便さなど、さまざまなひずみを引き起こしているとの指摘もあります。しかし習政権の目玉政策のひとつでもあるため、今後も継続するとの見方が強いです。

一方で、ゼロコロナの看板は掲げつつ、水際対策などは緩和されるのではないかとの観測もあります。

とはいえ「ゼロコロナ政策」自体は、少なくとも来年3月に開催される「全人代」までは継続されそうで、中国人観光客の回復は先になりそうです。

インバウンド観光に与える影響は

観光に与える影響が最も大きいのは、ゼロコロナ政策の継続が濃厚ということです。

近年経済成長著しい中国の観光客が日本に戻ってこないのは、かなりの痛手です。2019年には訪日中国人観光客が人数比で約3割、消費額比で約4割と、ともにかなりの割合を占めるため、影響は少なくありません。

外交方針は、対米・対台湾への強硬姿勢が継続されたことで、日本との関係も予断を許さない状況です。

また台湾有事のリスクも現実味を色濃くしたといえるでしょう。中国海軍が急速に力をつけており、今後も増強方針は変わりません。中国軍は台湾に侵攻できるだけの軍事力を得つつあります。

アメリカ海軍の首脳は、台湾進攻が2022年か2023年中に起きる可能性もあると指摘しました。従来は2027年ではという予測がなされていましたが、今回の党大会での強硬姿勢を受け、アメリカも警戒感を強めています。

もし中国と台湾の間で武力衝突が起こることがあれば、日本のインバウンド需要回復の展望を大きく揺るがしかねません。

日本のインバウンドの「最大顧客」であった中国が今後どういう動きをするのか、注視する必要があります。

文・訪日ラボ編集部/提供元・訪日ラボ

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