恐竜たちを滅ぼしたのは1つの巨大隕石だと考えられており、当時の状況を理解するため多くの調査や研究が行われてきました。

そして最近、アメリカ・ミシガン大学(University of Michigan)地球環境科学科に所属するモリー・レンジ氏ら研究チームが、地球規模のシミュレーションにより、隕石突後10分間の津波の高さや広がり方を表現しました。

シミュレーションによると高さ4.5kmもの波がつくられた可能性もあるというのです。

そしてこの結果は、集められた世界中の100以上の地質データとも合致しています。

研究の詳細は、2022年10月4日付の科学誌『AGU Advances』に掲載されました。

「隕石衝突」の分析が進められる

恐竜の時代「中生代」を終わらせたのは、「チクシュルーブ衝突体」と呼ばれる巨大隕石だったと考えられています。

1990年代初頭には、メキシコ・ユカタン半島のチクシュルーブ村付近で直径177kmものクレーターが発見されており、ここに巨大隕石が落ちたと推定されました。

この衝突によって大規模な山火事や津波が発生し、地球上の動植物の4分の3が絶滅したのです。

恐竜を絶滅させるほどの隕石の影響とは?
Credit:Canva

衝突直後の様子についてはあまり知られていませんでしたが、現代の技術を用いて徐々に解明されています。

例えば、2021年のアメリカ・ルイジアナ大学ラファイエット校(ULL)の研究では、2019年にルイジアナ州中央部の地下1500mで発見された「津波の痕跡」が調査されました。

地下の堆積層には隕石衝突時の津波によって波紋が刻まれており、これを分析したのです。

その結果、隕石落下が起こした衝撃はマグニチュード11を超え、発生した津波の高さが1500mを超えていたと判明しました。

恐竜を滅ぼした小惑星は「高さ1500メートルの津波」を引き起こしていたと明らかに

そして今回、隕石衝突時の様子がさらに詳しく解明されました。

2022年10月、ミシガン大学のモリー・レンジ氏ら研究チームが、隕石によって発生した津波をコンピュータモデルで再現し、世界中の地質データで裏付けを取ったのです。

津波の規模や広がりをシミュレーションする

研究チームは、以前の研究結果にもとづいて、直径14km、毎秒12kmで落ちる隕石をモデル化。

これをシミュレーション上で、ユカタン半島付近に衝突させました。

隕石の衝突後~5分後までのシミュレーション
Credit:Molly Range(University of Michigan)et al., AGU Advances(2022)

その結果、大きな衝撃によって堆積物と海水が弾き飛び、水の壁を一時的に形成。

衝突2分半後には、高さ4.5kmの津波が短時間形成されました。

一時的とはいえ、富士山を優に超える大波が生じたのです。

隕石の衝突5分後~10分後までのシミュレーション
Credit:Molly Range(University of Michigan)et al., AGU Advances(2022)

そして衝突10分後には、衝突地点から220km離れた地点で、高さ1.5kmの津波が広がり始めました。

研究チームは、このときのエネルギーが2004年のスマトラ島沖地震で生じたインド洋大津波のエネルギーの最大3万倍だったと推定しています。

インド洋大津波は23万人の死者を出した歴史的な巨大津波ですが、隕石衝突の津波は、これと比べものにならないくらい大きな津波だったのです。

これ以降の津波の広がりは、2つの津波伝播モデル「MOM6(深海津波のモデル化に使用)」「MOST(津波警報センターの津波予測で運用)」に入力され、世界各地にどのように広がっていくかシミュレーションされました。

研究チームは、2つのモデルで同様の結果が得られたことを高く評価しています。

津波伝播モデル「MOST」によるシミュレーション。6600万年前の地形なのでインドが洋上にあるなど現代と違いがある。
Credit:Molly Range(University of Michigan)et al., AGU Advances(2022)

結果は以下の通りです。(シミュレーションは6600万年前の地形なので多くの場所で陸地が繋がっていないなど現代と違いがあります)

  • 1時間後:津波がメキシコ湾の外側と北大西洋に広がる
  • 4時間後;津波が中央アメリカ海路を通過して太平洋に到達
  • 24時間後:津波は太平洋の大部分を東から、大西洋の大部分を西からそれぞれ横切り、インド洋には両側から流れ込む
  • 48時間後:津波が世界のほとんどの海岸線に到達

では、これらのシミュレーション結果は信頼性の高いものと言えるのでしょうか?

研究チームは、世界中の地質学的記録を調査し、モデル予測の裏付けを取ることにしました。