地球と同じように、火星でも「日食」は見られます。

しかし、その様子は地球上で見られるものとは、ずいぶん違います。

日食とは、月が太陽の前を横切ることで、太陽の一部(金環日食)または全部(皆既日食)が隠される天文現象です。

ところが、火星の衛星は、月のようにまん丸ではないため、いびつな形の日食を見せてくれます。

アメリカ航空宇宙局(NASA)は、2022年4月2日、火星探査車「パーサヴィアランス(Perseverance)」により、その日食の撮影に成功しました。

一体どんな形なのか、以下で見ていきましょう。

火星で見られる日食は、地球とまったく違う

まずは、パーサヴィアランスが撮影した実際の映像を見てみましょう。

これは、火星の2つある衛星のうちの一つ「フォボス」が、太陽の前を約40秒かけて横切っていく様子です。

太陽の右上から左下に向かっていくフォボスは、月と違って、かなりいびつな形をしているのがわかるでしょう。

平均直径22キロのフォボスは、火星の周りを約7.65時間という猛スピードで一周しています。

月が27日かけて地球を一周していることを考えると、その速さが実感できるでしょう。

またフォボスは、月よりはるかに小さい上に、火星からの”見かけの大きさ”が太陽よりずっと小さいため、太陽の前を横切っても、そのすべてを隠し切ることはありません。

こうした特徴から、火星では、地球とまったく異なる日食が見られるのです。

さらに、火星のもう一つの衛星「ダイモス」が、太陽面を横切る日食の撮影にも成功しています。

こちらは、2020年3月28日に、火星探査車「キュリオシティ(Curiosity)」が撮影した映像です。

平均直径12キロのダイモスは、フォボスよりさらに小さく、火星の周りを約30.35時間で一周しています。

ダイモスになると、火星から見える日食は、もはやホクロ程度にしか見えず、太陽光もほとんど遮られません。

一方で、地球から見える日食は、月の方が太陽よりはるかに小さいにもかかわらず、太陽の大部分(あるいは全部)を隠し切っています。

これは、奇妙な偶然の一致によるものです。

月のサイズは太陽より約400倍も小さいのですが、太陽より約400倍も地球に近い場所にあります。

それにより、地上から見える月と太陽は、見かけの直径がほぼ同じになるのです。

たとえば、家のベランダから見える巨大なビルでも、片目を閉じて、開いている目の前に人差し指を通せば、ビルはすっぽりと隠れてしまいます。

あとは、月と地球との距離に応じて、太陽の一部が隠れる「金環日食」か、全部が隠れる「皆既日食」かにわかれます。

(※ 月が地球をまわる公転軌道と、地球が太陽をまわる公転軌道は、完全な円ではなく楕円形になっているため、地球と月、地球と太陽の距離は、常に変化しています)

地球上では月と太陽の「見かけの大きさ」が同じになる
Credit: canva

さらに、私たち人類が誕生するタイミングもよかったようです。

現在、月は一年に約3.82センチの割合で地球から遠ざかっており、あと6億年も経つと、皆既日食は見れなくなります。

これは、火星でも同じことのようです。

しかし、火星衛星のフォボスは月と違って、火星側にどんどん近づいていき、3000万〜5000万年後には、火星の表面に衝突する可能性があるようです。

あるいは、火星の重力に引き裂かれて、その周囲を漂う残骸のリング(環)を形成するとも予測されています。

参考文献
Surreal NASA Videos Reveal What a Solar Eclipse Looks Like on Mars