2022年7月の小売業界では、先月に続き、コロナ禍で非対面・非接触サービスへの需要が高まったことや慢性的な人員不足をきっかけに、小売業界の支援を目的としたDX支援事業の開発や提供を行う動きが見られました。

また、セブン&アイの売上回復、東急やイオンなど大型店の新規出店などポジティブな業界の動きがある一方で、物価上昇や新型コロナ規制緩和によるスーパーの売上減少、EC市場の成長失速など今後の小売業界の売上を左右する可能性があるニュースもあります。

本記事では、7月の小売業界の動向や発表されたデータについてまとめます。

目次
小売DX
 ・アイリスオーヤマ:小売店支援事業に参入
 ・NTT東日本グループ会社:無人店舗システム支援事業に参入
 ・NTT コミュニケーションズ:VR空間での購買体験
 ・サイバーエージェント:アプリ開発支援ツールの提供開始
 ・三菱食品:GPSやビーコンから顧客の行動分析
 ・エディオン:子会社整理でDX内製化推進
小売業界ニュース
 ・セブン&アイ:小売業初の売上10兆円
 ・ファミリーマート:給料前払い制度導入
 ・大規模小売店つぎつぎオープンへ
 ・EC失速、コロナ禍で浸透も成長維持に課題

小売DX

小売業界ではDXの導入事例が多く見られました。

先月に続き、ウィズコロナ時代や慢性的な人員不足への対応が求められる小売業界において、DXによる業務効率化や経費削減、顧客満足度の向上を重視する傾向が見られます。

アイリスオーヤマ:小売店支援事業に参入

アイリスオーヤマは7月19日、小売店舗を支援する「ストアソリューション事業」に新規参入することを発表しました。

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(画像=▲ストアソリューション事業概要<省人化・省力化>:アイリスオーヤマ、『口コミラボ』より引用)

小売業における慢性的な人員不足や新型コロナ対策など店舗運営の業務負担が増加しているほか、電気料金の値上げによる運営経費の負担増、EC市場の成長による消費者の購買行動の変化などにより、実店舗は店舗運営に一層の工夫が求められる状況です。

こうした背景から、小売の実店舗でしか得られない顧客体験と価値創造を提供することが実店舗の課題となっており、アイリスオーヤマはAIのデータ解析やIotセンサー技術を活用し、店舗における様々な記録作業を自動化することで業務のDXを推進するとしています。

NTT東日本グループ会社:無人店舗システム支援事業に参入

テルウェル東日本(NTT東日本のグループ会社)は7月21日、レジを通さずに買い物ができる無人店舗システム『店舗向けスマート化ソリューション』を軸とした支援事業を新たに開始することを発表しました。

新型コロナにおける非接触ニーズや店舗の人員不足が事業開始の背景から、大手チェーン店でも無人店舗の導入例は増えていることから、人員不足や売上減少に悩む地方の小売店やオフィス内店舗などで導入を目指す方針です。

顧客はあらかじめスマートフォンのアプリをダウンロードし、QRコードをゲートにかざすことで入店して、カメラで商品のバーコードをスキャン後にセルフレジやアプリ上で決済を行うことができます。

小売店は無人店舗システムを導入することで、低コストな店舗運営を図れるほか、購買や気象データから利用者属性に合った商品制定、棚割や導線の改善、商品の販売数などをAIが予測し提案することで、効率的な店舗の運営につなげることが可能となります。

NTT コミュニケーションズ:VR空間での購買体験

NTT コミュニケーションズ(NTT Com)は7月4日、カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する東京都渋谷区の代官山蔦屋書店にて開催される「Hiroshi Nagai Exhibition TROPICAL MODERN」において、VR技術を活用した実証実験を7月16日より開始することを発表しました。

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(画像=▲NTT Com:Hiroshi Nagai Exhibition TROPICAL MODERN VR、『口コミラボ』より引用)

この実証実験はNTT ComとCCCが共同で行います。

DXによる新たな顧客接点創出を目的とし、XRや5G技術によるバーチャル空間での購買体験の実現とそれらが購買行動に与える効果を検証し、小売店舗における新しいビジネスの可能性を検証していきます。

本実証実験では、VR技術と株式会社NTTドコモの5Gを活用し、イラストレーター永井博氏の世界観へ没入できる「Hiroshi Nagai Exhibition TROPICAL MODERN VR」を提供します。体験者はヘッドマウントディスプレイを着用し、バーチャル空間上に再現された永井博氏の作品の世界観に没入することができると同時に、作品集やグッズをその場で購入することも可能です。

サイバーエージェント:アプリ開発支援ツールの提供開始

サイバーエージェントは7月25日、小売企業のアプリ開発を支援するサービス「CARTアプリ」(カートアプリ)の提供を開始することを発表しました。

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(画像=▲CARTアプリ:サイバーエージェント、『口コミラボ』より引用)

小売業界で急速に加速する小売DXにおいて、デジタルサービスや広告事業など多岐にわたる開発と運用が求められる中、多くの小売事業者は自社開発が難しいアプリやデータ基盤の開発を複数の外部企業に依頼をしていました。

しかし、外部企業に依頼を行っているため、アプリの使いやすさや効果の改善、データ分析などを頻繁に行うことが難しいという課題を抱えている企業が多く、今回「CARTアプリ」の提供ではこうした課題を改善することを目指します。

「CARTアプリ」では、「店頭における使いやすさ」に特化したUI/UXデザインとサービス設計で、会員証、クーポン、チラシなど小売のアプリに必要な基本機能を搭載したアプリを開発することが可能です。

また、スマホアプリとデータ基盤を連携することでデータを元にしたアプリの改善を行うこともできます。

さらに、小売データとAIを活用し顧客に合わせた1to1マーケティングを実現することで、顧客満足の向上と売上最大化を支援します。

三菱食品:GPSやビーコンから顧客の行動分析

三菱食品は7月15日、多様化する生活 様式に対応したデータ×デジタルマーケティングプラットフォーム構築に向けて、株式会社unerryと業務提携に関する覚書を締結したことを発表しました。

三菱食品は、9500社もの提携企業を通じて得られる年間約 12 億件のビッグデ ータと小売業や食品メーカー、生活者との接点、生活者理解のノウハウなどを強みとしています。

また、unerryは、リアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営しています。GPS およびビーコン技術により月間 300 億件超の人流ビッグデータをAIで解析し、OMOマーケティング支援や小売企業の店舗集客、メーカーの商品販促などの支援を行っています。

そこで、新型コロナの影響による生活者の行動や価値観の変化、デジタル化の加速に対応し、生活者により最適な場所で最適な情報を届けるために、2社がリテールメディアプラットフォームを共同で推進していくということです。

エディオン:子会社整理でDX内製化推進

株式会社エディオンは7月27日、連結子会社の株式会社エヌワークが、同じく連結子会社である株式会社Hampstead(ハムステッド)を吸収合併することを決定したことを発表しました。

合併の背景は、新たな購入体験の提供のためのDX、ならびにシステム開発の内製化の推進です。今回の合併により、子会社が持つそれぞれの強みを一箇所に集約し、一気通貫でスピーディーなシステム開発を行うことが可能となります。

今後は、2022年7月29日に合併契約書締結を行い、2022年10月1日に合併する予定です。

小売業界ニュース

ここでは、2022年7月の小売業界のニュースについてまとめます。

7月のニュースでは、セブン&アイの業績が成長傾向にあるほか、東急やイオンなど大型店が新店舗の出店を目指すなど前向きなニュースが多く見られています。

セブン&アイ:小売業初の売上10兆円

セブン&アイ・ホールディングスは7月8日、2023年2月期第1四半期(22年3〜5月)連結決算にて、売上高にあたる営業収益が前年同期比57.3%増の2兆4473億円と発表しました。

国内コンビニエンスストア事業はほぼ横ばいであるものの、積極的な海外への事業展開が業績向上に影響を与えたとみられます。

また、円安の影響を受けて想定為替レートを大幅に変更し、23年2月期連結業績予想における営業収益を前回予想から7600億円増の10兆4130億円に修正したと公表しています。

小売業初の10兆円超えを見込んでおり、さらなる海外展開の拡大が注目されます。

ファミリーマート:給料前払い制度導入

ファミリーマートは7月22日、コンビニエンスストアで働くアルバイトなどスタッフが給料日前に給与を受け取れる前払いサービス「プリポケ」を導入することを発表しました。

スタッフが生活スタイルに応じたタイミングで給与を受け取れるようにすることで、人材定着率の向上や新たな人材の獲得につなげたいという考えです。

最大で受け取れる給与の7割の前払いが可能で、加盟店が上限を設定することもできます。

2022年8月より東日本地区の約7,400店舗へ導入を開始し、2022年秋頃には全国約1万6000店舗のほぼ全店に導入する予定です。

大規模小売店つぎつぎオープンへ

経済産業省は8月1日、東急やイオン、イケアなどが6月に新設届出を申請したことを発表しました。

新型コロナの影響が徐々に小さくなりつつあるためか、大型店が各地へ出店拡大する動きを見せています。

主な届出は、神奈川県平塚市に2023年3月開業予定の「イオンモール平塚」、群馬県前橋市に2023年3月開業予定の「イケア前橋・ユニクロ前橋南インター店」東京都豊島区東池袋に2023年3月3開業予定の「アニメイト東池袋本店」などが挙げられます。

また、東急百貨店は7月21日、L Catterton Real Estate 、株式会社東急貨店と3社共同で地上36階地下4階の複合施設を創出する「渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト(Shibuya Upper West Project)」の計画を発表しました。

2027年竣工予定です。

セブン&アイ、小売業初の売上10兆円/ファミマ、給料前払い制度導入 ほか【小売業界動向まとめ 2022年7月】
(画像=▲渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト:東急百貨店、『口コミラボ』より引用)

EC失速、コロナ禍で浸透も成長維持に課題

新型コロナの影響を受け、日本のEC市場は急速に浸透し消費が2割以上増加したものの、市場成長は失速しています。

海外と比べると、主要国の中でも最低の水準で、依然としてEC浸透度の低さが背景にあります。

ナウキャストのJCB消費NOW調査によると、ECの消費支出同行指数は直近2か月はほぼ横ばいで、消費が増加していないことが分かりました。

売上が停滞しつつあるECをさらに底上げしていくには、新型コロナの行動制限が緩和されたことで売上が伸び始めている実店舗との連携が重要な鍵となります。たとえばオーダースーツのFABRIC TOKYOでは、ショールームと採寸に特化した実店舗を増やし、購入はネットでしたいが購入前に実物を見ておきたいという消費者の行動に対応する動きを見せています。

また、EC成長を維持するために、深刻な課題である物流の人員不足も解決していく必要があります。アマゾンジャパンやアスクルは中小企業と連携することによって独自の配送網を確保したり、西友や楽天グループは生鮮食品や弁当の配達に自動配送ロボットを活用したりと、市場拡大に向けてさまざまな取り組みが行われています。