新型コロナウイルスの影響や働き方の変化で、人々が室内で過ごす時間が増えています。

体を動かすことも少なくなったため、体型や体重が気なる人も多いでしょう。

では、体を動かさずにエネルギー消費を高める方法はあるのでしょうか?

オランダ・ライデン大学(Leiden University)考古学部に所属するアマンダ・ヘンリー氏ら研究チームは、ガムを噛むと基礎代謝量(BMR)と比較して15%分もエネルギー消費を上昇できると報告しました。

咀嚼は私たちの予想以上にエネルギーを消費する活動だったのです。

研究の詳細は、2022年8月17日付の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

ガムを噛むのはダイエットに効果的?

ヘンリー氏ら研究チームは、人類の顔の構造や食事、咀嚼の変化に対する理解を深めるため、咀嚼に費やされる1日のエネルギーを定量化するための実験を行いました。

今回の実験には、18~48歳までの女性15人と男性6人が参加。

フードをかぶり、酸素と二酸化炭素量を測定
Credit:Amanda Henry(Leiden University)_Hard chews: why mastication played a crucial role in evolution(2022)

参加者たちは、写真のように密閉されたフードをかぶり、2種類(ソフト・ハード)の甘くないガムを噛みます。

そして彼らがガムを噛んでいる間、酸素消費量や二酸化炭素生成量、咀嚼するための筋肉活動が計測され、そこからどれだけエネルギーを消費したか算出されました。

その結果、参加者たちはソフトガムを噛むと、平均して基礎代謝量(BMR)の10.2%のエネルギーを余分に消費しました。

また、ハードガムを噛んだ場合のエネルギー消費量は、15.2%に増加したようです。

咀嚼するときの筋肉の活動も測定。咀嚼には多くのエネルギーを消費すると判明
Credit:Amanda Henry(Leiden University)_Hard chews: why mastication played a crucial role in evolution(2022)

基礎代謝量とは、心臓を動かす、呼吸をする、などの生命維持に必要な最低限のエネルギー量のことです。

つまり、ガムを噛んでいる間は、ただ安静にしているときよりも、10~15%分のエネルギーを余分に消費できるのです。

ヘンリー氏は、この結果について「食べ物を咀嚼することは、多くのエネルギーを消費すると分かりました。しかも食べ物が硬ければ硬いほど、より多くのエネルギーを消費するのです」と述べました。

彼らは、昔の食物が現在よりもはるかに硬く、咀嚼に時間がかかっていたことにも注目しており、「消費エネルギーを抑えるよう人類の咀嚼システムが最適化されてきた」と考えています。

ガムはダイエッターの気晴らしにピッタリかも
Credit:Canva

ではこの情報は、「運動嫌いのダイエッター」にとって朗報なのでしょうか?

成人男性の基礎代謝量は1日約1500kcalとなっています。

1日中ガムを噛み続けると、1500kcal×15%=225 kcalとなり、約200 kcalを余分に消費できることになります。

とはいえ、現実には1日の半分もガムを噛み続けることはできないでしょう。

そう考えると、どう頑張ってもガムを噛むことで消費できるエネルギーは100 kcal未満になります。

そして14粒入りのキシリトールガムが約40 kcal、9枚入りの板ガムが約80kcalなので、ノンシュガーのガムを選択しない限り、あまり効率的とは言えません。

つまり、今回の報告はただガムを噛む「だけ」で痩せられるというほどうまい話ではないようです。

それでも咀嚼が私たちの予想以上に多くのエネルギーを消費するのは事実です。

座りっぱなしでろくな運動をしていないという人や、ダイエット中の空腹を紛らわしたいという人は、ガムを噛む習慣が少しは役立つかもしれません。

参考文献
Hard chews: why mastication played a crucial role in evolution

元論文
The cost of chewing: The energetics and evolutionary significance of mastication in humans