中国と日本の間には、一概に好き嫌いでは分けられない複雑な歴史的な事情があります。
一方で、新型コロナウイルスの流行以前である2019年までは訪日外国人観光客の中でも中国人がもっとも多く、観光地は中国人であふれていました。
特に若者の間では対日イメージは悪くなく、安全な国として留学生も多く来ています。
現在中国人はどのような印象を日本に抱いているのか、今後どのようなアプローチで中国人のビジネスを獲得していくべきかを考えます。
中国人の訪日への感情
領土問題や歴史的な背景などから、中国人の中には反日感情を持つ人も少なくないのが現状です。
実際中国のネットユーザーのコメントには、日中戦争や尖閣諸島問題といった歴史的背景から、中国人の中には日本に対して「侵略者」としての感情を持つ人も多く見受けられます。
過去にも政治的な摩擦が起こり日中関係が悪化した際、日本製品の排斥運動やデモが起こっている映像をニュースで目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
その一方で、訪日外国人観光客中で中国人が一番多いなど、日本を訪れたいと思っている中国人も数多くいます。
反日が取り沙汰される一方で、日本に一番多くきていた中国人観光客
反日感情を持つ人がいる一方で、2014年から2019年までの5年間の訪日中国人観光客数は伸び続けました。
日本政府観光局(JNTO)によると、中国人観光客数は2014年から2019年までの5年間で4倍近くまで増加しました。
2014年の訪日中国人観光客数は240万9,158人でしたが、5年後の2019年には959万4,394人を記録するまでになりました。
中国からは留学生も多くきている
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の調べによると、日本の大学、短期大学、専修学校や日本の大学に入学するための準備をする教育機関などに在籍する中国人留学生の数は令和元年に12万4,436人となっています。これは日本に在籍するすべての留学生の約60%を占め、一番多くの割合を占めています。
中国人は日本にどういったイメージを持っているのか
上記のように、訪日中国人は非常に多く訪れていますが、中国人が日本を訪れたいと思う理由や日本に対して持っている実際のイメージはどのようなものなのでしょうか。
旅行したい国No. 1
日本貿易振興機関(JETRO)が2018年8月に北京市や上海市、その他の地域で行った20~49歳の高所得者層へのアンケートの回答から、彼らが日本に対して「安全・安心」なイメージを持っていることがわかりました。
旅行したい国No.1として日本が2年連続で選ばれたことからも、日本に対してのイメージが良くなっていることがうかがえます。その他、「礼儀正しい」「エコ(省エネ・環境にやさしい)」「サービスが良い」の項目で日本が1位に選ばれるなど、日本に対しての良いイメージが定着しているようです。
また、日本に対するイメージで「安全・安心」が24.5%を獲得し、前年の2017年1位のドイツを抜いてトップに躍り出ました。
近年の日本への旅行者増加での爆買いや、越境ECの拡大によって日本製品を手にする人が増え、日本に対するイメージが変わりつつあることがわかります。
現在の中国人から見た日本は、安全安心で礼儀正しくサービスが良いという印象が定着しているといえるでしょう。
日本から中国に支援を
新型コロナウイルスが猛威を振るいだした2020年2月ごろから、日本は中国に多大な支援をしています。
在中日本大使館が発表した情報によれば、2月の時点で日本政府や地方自治体が医療用マスク113万枚以上、防護ゴーグル約8万セット、防護服7万4,000セット、体温計100個、消毒液1.15トンなどの支援物資を送りました。
さらに民間の企業からも多くの物資や約2,889万元(約4億5千万円)にのぼる寄付金が中国に届けられました。大阪の道頓堀では「武漢ガンバレ」と書かれた看板が多く掲げられ、SNSでの応援メッセージなどで激励する人も見られました。
そして、日本の感染数が増加してきた4月ごろには、恩返しの意を込めて中国から日本へ医療マスクなどが届けられました。
こうした出来事から、中国人の対日感情はポジティブなものに変わりつつあります。