通常、藻類の細胞は光を浴びると二酸化炭素を消費して酸素を作り出す光合成を行います。

ところがイギリスのブリストル大学と、中国のハルビン工業大学の国際研究チームは11月25日にオープンアクセスジャーナル『Nature Communications』で発表された論文において、空気中の日光にさらされると、酸素の代わりに水素を生成する微生物の作成に成功したと報告しました。

これは次世代のエネルギー源として多くの可能性を秘めた発見です。

目次
未来エネルギーとしての水素の可能性と問題点
光合成で水素を作る微生物

未来エネルギーとしての水素の可能性と問題点

光合成で「水素」を生成することに成功! 有害物質をださない未来エネルギーの実現に近づく
(画像=水素の原子モデル。 / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

水素は環境を汚染する要因が少なく、気候に対して中立な燃料と考えられています。

そのため、燃料電池などを始め将来的なエネルギー源として注目されている元素です。

しかし水素はそのままの形では地球上に存在していません。

他の元素と結びついてしまっているため、水素を利用するためにはまとまった量を人工的に生成する必要あります。

光合成で「水素」を生成することに成功! 有害物質をださない未来エネルギーの実現に近づく
(画像=水素生成の理科実験。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

理科の授業で塩酸と亜鉛から水素を作るという実験をした記憶があると思いますが、この方法で大量の水素を作るには非常にコストがかかり現実的ではありません。

そのため現在のところ、低コストで大量の水素を製造する場合、天然ガスや石油から取り出す方法が主流。

しかしこの方法では、化石燃料が消費され二酸化炭素が発生します。またエネルギー効率も良いとは言えません。

燃料電池は水素と酸素を消費して水を排出するだけで電気が作れる、という話しを聞いて、すでにクリーンなエネルギーがあるじゃないか、なんでもっと使わないんだと思っていた人もいるかもしれません。

ですが、結局水素をクリーンで安く大量に用意する方法がないというのがネックになっているのです。

光合成で水素を作る微生物

光合成で「水素」を生成することに成功! 有害物質をださない未来エネルギーの実現に近づく
(画像=光で水素を作る液滴ベースの微生物工場の概略図。 / Credit:Zhijun Xu et al.,Nature Communications (2020)、『ナゾロジー』より引用)

そこで登場したのが今回の研究です。

この研究では、通常、酸素を生成する植物の光合成で水素を生成させることに成功したといいます。

研究チームは1滴の中に、浸透圧圧縮によって1万個近いクロレラ藻類の細胞を詰め込みました。

液滴の奥深くに閉じ込められた細胞は、酸素濃度が低下することで、通常の光合成回路を乗っ取って水素を生成するヒドロゲナーゼと呼ばれる特殊な酵素をオンにすることができます。

こうしてチームは1ミリリットルの液滴の中に水素を生成する25万の細胞を押し込めた微生物反応器(マイクロリアクター)を作成したのです。

さらにチームはこの生きた微生物反応器をバクテリアの薄い膜でコーティングしました。

バクテリアの膜は液滴の酸素を除去するため、ヒドロゲナーゼ活性する藻類細胞の数がさらに増え、水素の発生レベルを上げることに成功したのです。

この研究は初期段階ですが、今回提案された方法は、微生物を使ってクリーンにエネルギーを開発できる可能性を示しています。

研究チームの1人、ハルビン工業大学のファン教授は、

「方法論は非常に簡単です。生細胞の生存率を損なわずに、この方法は拡張していけるはずです。また、他の分野にも応用可能な柔軟性があり、このマイクロリアクターを使ってエタノール製造を行うこともできます」

と話しています。

近い将来、完全にクリーンな方法でエネルギーが作れるようになるのかもしれません。


参考文献

University of Bristol


提供元・ナゾロジー

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