NASA(アメリカ航空宇宙局)は26日、「月面の太陽光が当たる部分で初めて水の存在が確認された」と発表しました。
今回の観測は、飛行機に搭載した望遠鏡・SOFIA(成層圏赤外線天文台)によって行われ、地球から見える「クラビウス・クレーター」に見つかったとのことです。
NASAのケイシー・ホニボール氏は「月面には考えられている以上に水が存在するかもしれない」と話しています。
研究は、10月26日付けで『Nature Astronomy』に掲載されました。
目次
見つかった水は「サハラ砂漠にある量の100分の1」
月には予想以上に水がある? NASA「アルテミス計画」でも水を捜索
見つかった水は「サハラ砂漠にある量の100分の1」
以前の調査では、2009年に水の痕跡が見つかり、2018年に氷の存在が確認されました。
実際、月の南極域では陽が当たらないことで水の蒸発が防がれ、氷の状態で保存されていることが分かっています。
その一方で、これまでは水分子(H2O)とそれに最も近いヒドロキシ基(OH)とを識別できていませんでした。
しかし、今回のSOFIAによる観測では、水分子に特有の化学的特徴がはっきりと見つかっています。

水が見つかった「クラビウス・クレーター」は、月面上で最大級のクレーターのひとつであり、南半球に位置しており、地球からも見えます。
観測の結果、月の土壌1立方メートルにつき約350ミリリットルの水が含まれており、見つかった水量は「サハラ砂漠全土にある水の100分の1程度」とのことです。


月面の水は、宇宙空間からやってくる隕石のつぶてにより生じると考えられますが、太陽光の当たる場所ではその熱で水が蒸発し、月面には残らないと推測されていました。
今回見つかった水分子は、鉱物内に閉じ込められていたことで蒸発を免れたものと思われます。
月には予想以上に水がある? NASA「アルテミス計画」でも水を捜索
これとは別に観測チームは、極小の氷の粒が無数に保存されているエリアも新たに発見しており、これらを合わせると、水が存在する月面積は従来の説をはるかに上回る4万平方キロと算出されました。
同チームのポール・ヘルツ氏は「今回の発見から、月面には水を作り出して保存する方法が(上記以外に)複数あるのかもしれない」と話します。
また、水の存在は月面での人的活動のために重要な資源となります。
宇宙飛行士の飲用にもなりますし、宇宙船の燃料に応用することも可能です。

今回発見された水が実際に利用可能かどうかはまだ分かりませんが、月探査計画を進展させるには必要な資源となるでしょう。
水が現地調達できれば、月面での長期滞在も夢ではありません。
NASAは今後、2024年の有人月探査計画(アルテミス計画)を進めており、水の採取を目的のひとつとしています。
提供元・ナゾロジー
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