水に含まれた有害金属を除去する能力を持つバクテリア(細菌)が新たに発見されました。

本研究を主導したインド工科大学ヴァナラスヒンドゥー校(IIT-BHU)によると、このバクテリアは、汚染水に含まれる「六価クロム」という重金属を細胞内部に積極的に取り込む性質があるとのこと。

六価クロムを取り込んだバクテリアを水から分離することで、水を浄化することが可能になるようです。

またバクテリアは大量培養が容易であり、低コストかつ無害な排水処理への応用が期待されています。

研究は、8月26日付けで学術誌『Environmental Chemical Engineering』に掲載されました。

目次

  1. 六価クロムの最大除去効率は99.96%

六価クロムの最大除去効率は99.96%

このバクテリアは、インド中部のマディヤ・プラデーシュ州シングラウリにある排水路で採取された汚水から発見されました。

この地域には六価クロムなどの重金属を含んだ排水を排出する鉱山が存在していることが知られています。

六価クロムは様々な産業で使用されている重金属で、非常に有害な化合物として有名です。

例えば、六価クロムが皮膚や粘膜に付着したまま放置してしまうと、皮膚炎や腫瘍、がんの原因となります。

また、六価クロムに汚染された水を飲んでしまうと、嘔吐や肝臓・腎臓疾患、不妊などを引き起こす危険性があります。

しかし研究チームが鉱山から流れ出る廃水を調査したところ、高濃度の六価クロムへの耐性がありるだけでなく、細胞内部に積極的に取り込んでいるバクテリアを発見します。

さらに調査を進めたところ、このバクテリアは六価クロムを取り込むことでグルタチオン-S-トランスフェラーゼやカタラーゼ、ペルオキシダーゼといった様々な抗酸化酵素の生成を増加させる性質があり、有毒なハズの六価クロムを何らかの生理反応に利用している可能性も示されました。

そこで研究者たちは、この奇妙なバクテリアを人間の浄水システムに組み込むことを目的とした実験を開始しました。

結果、新たなバクテリアは六価クロムを最大で99.96%除去できると判明(六価クロムの濃度が50mg/Lの場合)。

バクテリアは新たに「Microbacterium paraoxydans strain VSVM IIT (BHU)」と命名されています。

重金属を好むバクテリアを使って汚染水の浄化に成功
(画像=バクテリアは低コストで大量に培養できる / Credit: jp.depositphotos,『ナゾロジー』より 引用)

次に研究者たちは、より実践的な状況を再現する為、工業廃水と合成廃水にバクテリアを加えた場合の検証を行いました。

結果、バクテリアは六価クロムを含む排水での速い増殖速度と、高い除去能力を保っていると判明。

加えて、六価クロムを吸収したバクテリアを、従来の浄水システムを用いて排水から簡単に分離できることが確認されます。

バクテリアは培養が簡単で、従来の排水処理とは違い、熟練した人材を必要としません。

その使い勝手の良さから、多くの地域で清潔な水の確保が困難なインドにおいて、多方面での活躍が期待されています。

世界保健機関(WHO)によると、水を媒介とした疾病による死亡者は、途上国を中心に年間340万人に達しているとのこと。

特にインドや中国では、六価クロムのような重金属が、がん発症の原因になることが大きな問題となっています。

このバクテリアを活用することで、安価な排水処理を実現させ、世界中で安全な水を飲めるようになるかもしれません。

提供元・ナゾロジー

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