意外かもしれませんが「破局噴火」という言葉は学術用語ではなく2002年に「黒石耀」氏が発表した小説「死都日本」において巨大噴火を表すために考案された造語と言われています。

しかし作品のもつ高いリアリティーや優れた分析力が評価され、いつのころからかマスコミやネットなどで「文明を終わらせる破局的な噴火」として用いられるようになったようです。

作品では、巨大噴火によって日本が壊滅的な被害を被り、日本の各地に死がもたらされる様子が描かれています。

しかし作品で描かれるような「破局噴火」は空想の産物ではなく地球の歴史上、何度も繰り返されてきました。

そして近年の研究により、それら多くの破局噴火が同じ場所で繰り返し起きる様子と、そのメカニズムも解明されてきました。

今回は「破局噴火とは何か?」といった基本的な定義、歴史、発生メカニズム、そして予測手段など、破局噴火にかかわるさまざまなトピックをまとめて紹介したいと思います。

目次
そもそも破局噴火って「どれくらい」の規模なの?
過去に起きた破局噴火は人類や地球生命に壊滅的な被害をもたらした

そもそも破局噴火って「どれくらい」の規模なの?

破局噴火の定義

まず話を進めるにあたり、最初に破局噴火の定義を確かめておきたいと思います。

破局噴火と言われる巨大噴火は日本においては「火山爆発指数」が「レベル7」以上(噴出物の量が100立方キロメートル以上)の噴火を示すと言われています。

一方で、海外において破局噴火と同じような意味合いで使われている「スーパーボルケーノ(超巨大噴火)」は「火山爆発指数」が「レベル8」以上(噴出物の量が1000立方キロメートル以上)の噴火を示すと言われています。

(※火山爆発指数が1上がると噴火の規模は10倍になるとされます。また噴出物の量はあくまで目安であり、噴出物が500立方キロメートルあたりでもレベル8に分類されることが多くなっています)

ちなみに近年において最大である、1991年にフィリピンで起きたピナトゥボ山の噴火は、噴煙による太陽光の遮断により地球の平均気温を0.4度下げるほどでしたが、それでもこの噴火の火山爆発指数は「レベル6」(噴出物の量は10立方キロメートル以上)程度でした。

破局噴火が繰り返し起こる仕組み

人類史を終わらせる恐れがある「破局噴火」とは何なのか?
(画像=地下にマグマがたまりはじめる / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)
人類史を終わらせる恐れがある「破局噴火」とは何なのか?
(画像=マグマ溜りがどんどん拡大していく / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)
人類史を終わらせる恐れがある「破局噴火」とは何なのか?
(画像=溜まったマグマが一気に爆発して破局噴火を起こす / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)
人類史を終わらせる恐れがある「破局噴火」とは何なのか?
(画像=全てが吹き飛ぶとカルデラが形成される一方で、再びマグマの蓄積がはじまる / Credit:Canva . ナゾロジー編集部、『ナゾロジー』より引用)

破局噴火が通常の火山噴火と異なる最大の理由は「溜め込んでいるマグマ」の量にあります。

通常の火山噴火も溜まったマグマを吹き出しますが、破局噴火ではその規模がケタ違いなのです。

破局噴火では上の図のようにマグマが地表の下に溜め込み続けられ、何かのキッカケに一気に噴出します。

そして噴出は大規模に地表を吹き飛ばすため、後には巨大なカルデラが形成されることになります。

しかしより厄介なのが、破局噴火が起こる場所では常にマグマが地下から供給されるために「マグマの溜め込み」と「噴出」が繰り返し起こる点にあります。

たとえば、米国にあるイエローストーン国立公園の火山はおよそ60~70万年周期で破局噴火を繰り返す傾向にあることが知られています。

破局噴火によってマグマ溜りがリセットされたとしても、地下からマグマが供給され続ける限り、噴火は繰り返されます。

溜まったマグマを定期的に冷やしたり除去することができれば、原理的には、破局噴火を封じ込めることができるものの、残念ながら現在の人類の技術力では不可能です。

人類にできるのは、噴火の兆候を検知し、少しでも被害を抑えるため避難計画を立てることだけです。

しかし噴火の規模によっては、地球全土が被災地域になる可能性もあるようです。

では、過去に起きた人類を絶滅の危機に追い込んだ「レベル8」の破局噴火や、人類誕生前に起きた生物の大量絶滅を引き起こした「レベル判定不能」の異常噴火どんなものだったのでしょうか?

過去に起きた破局噴火は人類や地球生命に壊滅的な被害をもたらした

人類史を終わらせる恐れがある「破局噴火」とは何なのか?
(画像=トバ火山の噴火は巨大すぎてわかりやすい円形のカルデラではなくなっている / Credit:wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

人類の進化に最も影響を与えたと考えられているのが7万~7万5000年前に起きた「トバ火山」の噴火です。

現在のインドネシアの位置にある「トバ火山」の噴火によって大気中に吐き出された噴出物は2000~5800立方キロメートルと考えられており最上位の「レベル8」に相当します。

トバ火山の噴火は凄まじく、大気中に巻き上げられた大量の火山灰により日光が遮られて地球の気温が5℃も低下。

また寒冷化の影響はその後6000年にわたり続き、地球は「ヴュルム氷期」と呼ばれる氷河期に突入することになります。

つまり被災地域は地球全土に及んだと言えるでしょう。

当時、ホモ属は私たちの直接的な先祖であるホモ・サピエンス(人類)の他に複数種類が存在していましたが、地球寒冷化の影響で、ホモ・エレクトス(北京原人など)、ホモ・エルガステルなどは絶滅してしまいました。

そして世界各地に進出しつつあった人類も、トバ火山による破局噴火の影響によってアフリカを出た者たちはほとんどが死滅し、総人口が1万人を下回るまで激減してしまいました。

(※ほかにもネアンデルタール人とデニソワ人は生き残ったと考えられます)

しかし地球の歴史には、トバ火山の噴火(レベル8)を遥かに上回る異常噴火も起きていました。

人類史を終わらせる恐れがある「破局噴火」とは何なのか?
(画像=2億5200万年前に起きた異常な噴火によって、広大な土地が厚さ数キロの溶岩によって覆われた / Credit:wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

今から2億5190万年前、ペルム紀末恐竜が登場する少し前の時代に現在のシベリアに存在する「シベリア・トラップ」と呼ばれる部分で、地球深部から巨大なマグマの塊が吹き上がり、地球史上最大クラスの噴火が起こりました。

噴火によって放出されたのはマグマだけでも400万立方キロメートル。

噴火期間はなんと200万年に及んだと予想されています。

その結果、地球環境は激変し、酸素濃度は10%にまで低下。

海洋種の81%、陸上種の70%が絶滅する地球史上最大の大量絶滅が発生しました。

このような異常噴火は現在の地球で起こる前兆はみられませんが、地球にとって表層部の生態系はちょっとした反応で崩壊する、些細な存在であることを思い知らされます。

しかし人類はこのような危険な噴火について、学び続けることである程度の予測が可能になってきました。

では、今後破局噴火が起きる可能性のある火山はあるのでしょうか? 次のページでは現在人類が監視を続けている破局噴火火山について解説します。