在日外国人向け街歩きツアーや海外向けオンライン体験の企画運営をしております、インバウンドアナリストの宮本です。
前回は“【徹底考察】20年ぶり"円安"はインバウンド回復の起爆剤となるか?”
というテーマで書かせて頂きました。その時点の4月13日では1ドル126円台でしたが、そこからさらに加速して現時点では一時1ドル139円台をつけるなど、急速に円安が進行しました。
さて、今回の記事では円安は訪日外国人消費額にプラスなのか?というテーマで考察していきたいと思います。
目次
円安は本当にインバウンド消費の「追い風」なのか?
為替レートはインバウンドの「買物代」以外、ほぼ相関関係なし
円安は本当にインバウンド消費の「追い風」なのか?
確かに海外旅行をするときに、通貨ベースでの負担額が減るのであれば、ホテルのグレードを上げたり、買物を多くしたりと、すこし贅沢をしたいと考えるのは万人共通の事だと思います。しかし、実際にそうなのでしょうか?データを使って検証していきたいと思います。
その背景は円安になれば、自国通貨ベースでの負担額が減るので、日本へ旅行しやすくなると考えることが前提にあると思います。そして日本国内でも財布の紐が緩くなるのでは?という考えもあると思います。
前回の記事の公開後も、「円安はインバウンドにプラス」という記事やニュースをたくさん見かけます。
7月14日にドル円が一時1ドル139円台を付け28年ぶりの円安水準となりました。これは日米欧の中央銀行の金融政策の違いで相対的に円が弱くなっていますが、この記事では円安の理由は深く追及はしません。
為替レートはインバウンドの「買物代」以外、ほぼ相関関係なし
まず結論から申しますが、全体の訪日外国消費額とドル円の為替レートに相関はあったものの、その要因は中国人観光客の爆買いがあったときに、たまたま円安だっだと言う事がわかりました。
そして為替レートは「宿泊代」や「飲食代」には全く相関がないと言う事もわかりました。
以下の図をご覧ください。

図の縦軸は訪日外国人消費額です。横軸はドル円のレートになります。左に行けば円高、右に行けば円安になります。
一番上の薄い青は訪日外国人消費額で訪日外国人の日本国内での消費額の総額です。
Rスクエア(決定係数)は0.67となっており、相関係数(1に近いほど相関があり、-1に近いほど逆相関がある)は0.81と高いといえます。
この数値をパッと見れば、「円安はインバウンドにプラス」、だと言う事が出来ると思います。
しかし、消費額の期間と中身を分解して見ていくと、驚くべき事実がわかりました。
訪日外国人消費額の下にある宿泊料金をご覧ください。こちらはRスクエアは0.05(相関係数-0.26)となっております。
これが意味することは円高だろうが円安だろうが「宿泊料金」には影響がないと言い切れます。
また、「飲食代」、「娯楽サービス」、「交通費」もドル円とほぼ全く相関がないという事がこの図から読み取れると思います。
つまり、円安でも円高でも旅行者は普段使っているホテルや飲食などの予算は変えないと考えられます。
これは私の推測ですが、ホテルを例に挙げると、OTA経由で予約するときに、宿泊料は自国通貨での表示(以下の図を参照)になっているので、旅行者は宿泊先を常に自分のプライスレンジ内(予算内)に収めているのではないかと考えています。
だからこそ、為替レートによって多少日本円では高い宿を選ぶ可能性はあるものの、大きな消費額増加にはつながらないだろうと判断できます。
