お腹を壊さずに牛乳を飲むには、乳糖を分解・消化できる「乳糖耐性(ラクターゼ活性持続)」が必要です。

現在でも世界人口の約3分の2が乳糖耐性を持たないままですが、ヨーロッパや北米、日本では盛んに牛乳が消費されています。

一方で、人類がいつ、どのように乳糖耐性を獲得したのかはよく分かっていませんでした。

ところが、9月3日付けで『Current Biology』に掲載された研究によると、乳糖耐性の遺伝子は、紀元前1200年頃の中央ヨーロッパから急速に拡散し始めたことが示唆されました。

しかも、その拡散スピードは、人類における他の遺伝的な進化速度に比べて異様な速さだったようです。

目次
「乳糖耐性」はヨーロッパ人に多い
紀元前1200年頃の乳糖耐性率は「8人に1人」

「乳糖耐性」はヨーロッパ人に多い

お腹を壊さずに牛乳を飲める能力「乳糖耐性」は、紀元前1200年のヨーロッパから急速に広まった
(画像=Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

実は一般に、ヒトを含むすべての哺乳類は、大人になると牛乳を消化できなくなります。ですから、成長した犬や猫にはミルクを与えない方が懸命でしょう。

原因は、小腸で「ラクターゼ」という酵素が働かず、牛乳に含まれる「乳糖」が分解されないことです。

しかし、人類の一部は、遺伝子の突然変異のおかげで、一生を通じて牛乳を飲めるようになりました。

突然変異の発生源の大半が、中央ヨーロッパや北欧の人たちでした。

紀元前1200年頃の乳糖耐性率は「8人に1人」

ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の研究チームは、ヨーロッパ人に乳糖耐性が強く見られる理由を確かめるため、ドイツ北東部のトレンゼ川のほとりで大量に出土した人の遺骨を調べました。

これらの遺骨は、紀元前1200年頃に起こった戦闘で亡くなった人々のもので、およそ4000名が参加し、その4分の1が命を落としてこの地に眠っています。

お腹を壊さずに牛乳を飲める能力「乳糖耐性」は、紀元前1200年のヨーロッパから急速に広まった
(画像=トレンゼ川の遺跡/Credit: Tollense Valley Project、『ナゾロジー』より引用)

同チームは、遺骨から採取したDNAを分析し、そのデータをのちの中世ヨーロッパの人々と比べてみました。

その結果、乳糖耐性の遺伝子を持つ兵士の割合は、わずか8人に1人と判明しています。

これはヨーロッパに家畜農業が導入されてから4000年以上経っていることを考えると、かなり少ない数字です。

お腹を壊さずに牛乳を飲める能力「乳糖耐性」は、紀元前1200年のヨーロッパから急速に広まった
(画像=トレンゼ川で出土した兵士の遺骨/Credit: Tollense Valley Project、『ナゾロジー』より引用)