アメリカ南東部にのみ分布する「ハエトリソウ」は、虫を食べて栄養にする食虫植物です。
一般的な植物は根っこから栄養補給するのですが、ハエトリソウは虫を挟み込む葉っぱから養分を摂るので、栄養に乏しい土壌でも生育できます。
その一方で、ハエトリソウが葉を閉じる仕組みは、これまで解明されていませんでした。
しかし今回、基礎生物学研究所の研究グループが、約30年前に提唱された仮説を実証し、葉が閉じるメカニズムの解明に成功したと発表しました。
10月5日付けで『Nature』に掲載された報告によると、ハエトリソウに与えられた刺激量が、ある閾値を超えると閉じるようになっていたとのことです。
ハエトリソウは”短期記憶”を持つ
ハエトリソウの2枚折りになった葉は、縁に沿って多くのトゲを持ち、内側の葉表面には6本の鋭い「感覚毛」があります。
この感覚毛に刺激が与えられると葉が閉じるのですが、1回触っただけでは閉じません。
30秒以内にもう1回触ると、わずか0.3秒で素早く葉を閉じ、昆虫を捕まえるのです。

感覚毛に触れると葉が閉じる / Credit: 基礎生物学研究所(画像=『ナゾロジー』より 引用)
2回触らないと反応しないのは、雨やゴミが当たって意図せず葉を閉じないようにするメリットがあると言われます。
ただここには「1回目の刺激を30秒間覚えている」という”短期記憶”の存在が暗示されています。
脳や神経を持たないハエトリソウが、どうして刺激を覚えていられるのでしょうか。