クマとイヌのハイブリッドのような古代モンスター「ベアドッグ(bear dog)」の新種が発見されました。

スイス・バーゼル自然史博物館(Natural History Museum Basel)の古生物学研究チームは、30年ほど前にフランス南西部で見つかっていた下顎の化石を新たに分析。

その結果、ベアドッグの属するアンフィシオン(Amphicyonidae)科の新種であることが判明しました。

新種の学名は、バスク神話(スペインとフランスにまたがるバスク地方の神話)の一つ目巨人・タルタロ(Tartaro)にちなんで、「タルタロシオン(Tartarocyon)」と命名されています。

研究の詳細は、2022年6月15日付で科学雑誌『PeerJ』に掲載されました。

目次
古代モンスター「ベアドッグ」はどんな生物?
新種のベアドッグは1200万年前のフランスに生息

古代モンスター「ベアドッグ」はどんな生物?

人類が初めてベアドッグの存在を知ったのは、19世紀初めにアンフィシオン科の化石が発見されたときです。

化石の分析から、歯を含む頭部はイヌやオオカミに近い反面、胴体はクマとの類似性が見られました。

そこから、1836年に”曖昧な犬(ambiguous dog)”という意味を込めて、分類上は「アンフィシオン」という科名が付けられています。

それと同時に、専門家の間では、イヌとクマのハイブリッドのようであることから「ベアドッグ」とも呼ばれるようになりました。

その後、ベアドッグの化石は、北米やヨーロッパのフランス、スペインなどで数多く発見されています。

これらの化石データをまとめると、ベアドッグが出現したのは約4500万年前の北米であり、初期は比較的細身で、全体的にオオカミに近い容姿をしていたようです。

熊と犬のハイブリッド古代モンスター「ベアドッグ」の新種を発見!
(画像=アンフィシオン科の初期生物「ダフォエノドン(Daphoenodon)」 / Credit: en.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

その後の2200万年間で、北米からアジア、ヨーロッパ、アフリカへと拡散し、それに伴って、クマのような胴体を進化させました。

平均的な体重は320キロで、最大だと770キロと推定される種もいます。

植物性の食物はうまく消化できなかったらしく、肉を主食にしていたようです。

ところが、約800万〜750万年前に化石記録がピタリと止まり、中新世(2400万〜510万年前)の後期までには完全に絶滅したと考えられています。

正確な絶滅原因は定かでありませんが、同時代に台頭しはじめた他の大型哺乳類との生存競争に敗れた可能性が高いとのことです。

では、今回見つかった新種は、どんなベアドッグだったのでしょうか?

新種のベアドッグは1200万年前のフランスに生息

熊と犬のハイブリッド古代モンスター「ベアドッグ」の新種を発見!
(画像=新種「タルタロシオン」の復元イメージ / Credit: Denny Navarra – Paleontologists discover a new type of ‘bear dog,’ a large predator from the Pyrenees(phys, 2022)、『ナゾロジー』より引用)

新種の化石は、1993年に、フランス南西部のピレネー=アトランティック県にある小さな集落「サルスピス(Sallespisse)」で発見されました。

見つかったのは、歯を含む下顎の部分で、約1280万〜1200万年と推定される堆積物から回収されています。

熊と犬のハイブリッド古代モンスター「ベアドッグ」の新種を発見!
(画像=新種の下顎の化石 / Credit: Bastien Mennecart et al., Peer J(2022)、『ナゾロジー』より引用)

本研究チームが注目したのは、他のアンフィシオン種には見られない歯並びの良さと第4小臼歯があったことです。

これらは種の特定にとって重要な箇所であり、分析の結果、未記載の新種であることが判明しました。

先述したように、学名は、バスク神話に出てくる一つ目巨人・タルタロ(Tartaro)から「タルタロシオン(Tartarocyon)」と命名されました。

タルタロは、化石が見つかった地域でも有名な神話上のモンスターであり、山奥の洞窟に住み、羊や若者を捕らえて食べると伝えられています。

化石が見つかった場所はピレネー山脈の北端に位置するため、タルタロシオンも神話の魔物と同じように山を徘徊し、見つけた獲物を食べていたかもしれません。

熊と犬のハイブリッド古代モンスター「ベアドッグ」の新種を発見!
(画像=タルタロ / Credit: en.wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

タルタロシオンの推定体重は約200キロに達し、クマのような力強い四肢と、イヌのような鋭い歯で獲物を捕食していたと考えられます。

また、研究主任のバスチアン・メヌカート(Bastien Mennecart)氏いわく、1300万〜1100万年前にピレネー山脈(スペインとフランスの境に位置)周辺に生息していた陸生脊椎動物の化石が見つかるのはきわめて珍しいとのこと。

タルタロシオンのより詳細な調査と、同地でのさらなる化石発掘によって、当時のヨーロッパにおけるベアドッグの、ひいては大型哺乳類の進化について、理解を深められるかもしれません。


参考文献

Paleontologists discover a new type of ‘bear dog,’ a large predator from the Pyrenees

Prehistoric BEAR DOG roamed the Pyrenees 36 million years ago: Fossilised lower jaw of a previously unknown 50-stone predator is unearthed in France

元論文

A new gigantic carnivore (Carnivora, Amphicyonidae) from the late middle Miocene of France


提供元・ナゾロジー

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