地球の北(N極)と南(S極)の地磁気が入れ替わってしまう磁極反転は、実は地球上でたびたび起こっている現象だと言われています。

地球で最後に起こった磁極反転は、約4万1000年前と言われていて、初期の人類も遭遇していたと考えられています。

ただその具体的な時期や被害の詳細は、これまで明らかとなっていませんでした。

しかし、2月19日に科学雑誌『Science』で発表された新しい研究は、地中に保存された古代の大木の年輪から、この地球最後の磁極反転の記録を発見したと報告しています。

ここからは、磁極反転の詳細な発生時期や、被害状況が明らかにすることができるといいます。

目次
磁極反転を記録した古代の巨木 カウリの木
「42」という数字と奇妙に一致する古代のイベント

磁極反転を記録した古代の巨木 カウリの木

地球上では、磁極反転(ポールシフト)はたびたび発生しています。

磁極が完全に逆転する大規模な磁極反転は、およそ78万年前が最後だったと日本の研究者によって明らかにされました。

しかし、地磁気が不安定になって大きく移動する地磁気エスカレーション(地磁気遷移)は、およそ4万1000年前に発生していて、このとき約800年間に渡り地球の磁極は反転していたと考えられています。

この事実は強磁性鉱物に記録されていて、この地球最後の磁極反転は「ラシャンプ地磁気エスカレーション」と呼ばれています。

この時代はすでに人類の祖先も存在していた時代であり、ネアンデルタール人の絶滅にも、このラシャンプ地磁気エスカレーションが関係していた可能性が指摘されています。

しかし、具体的な磁極反転のタイミングや、環境への影響がどのようなものであったのかは明らかになっていませんでした。

ところが、これを記録した存在がニュージーランドで発見されたのです。

それは古代の木の年輪の中にありました。

人類も被害者、「地球最後の磁極反転」の詳細が明らかに 世界中の空を雷雨とオーロラが覆った!
(画像=ニュージーランドにだけ生育する巨木「カウリの木」 / Credit:pixabay、『ナゾロジー』より引用)

ニュージーランドの北島には、ここにしか生えない非常に巨大な木「カウリの木」が存在しています。

カウリの木は成長が非常に遅く、年輪が非常に蜜に残されるとんでもなく長寿の木で、樹齢1000年を超えるものも珍しくありません。

このカウリの木は、ジュラ紀の頃から存在していたと考えられるとても古い種で、はるか昔に倒れたものが土中から発掘されることもあります。

今回研究グループが発見したのは、そんな堆積物の下に埋められた古代のカウリの木で、4万年以上前のものだと推定されました。

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(画像=ニュージーランドのNgāwhāで発見された古代のカウリの木。 / Credit:Nelson Parker、『ナゾロジー』より引用)

この古代の巨木の年輪には、地球の磁場が崩壊したことで引き起こされた、大気中の放射性炭素レベルの変動が記録されていました。

この放射性炭素とは、炭素年代測定で利用されている炭素14です。

炭素14は、宇宙線(宇宙から飛来する放射線)を浴びた上層大気中の窒素14が変異して生まれます。

これは化学的な性質は、普通の炭素と変わらないため、酸素と結びついて重い二酸化炭素になって地上に降りてきて、植物が光合成を行う際に取り込まれます。

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(画像=炭素14が植物に取り込まれるまで。 / Credit:butakabon、『ナゾロジー』より引用)

このような過程で生まれるため、炭素14は地球では非常にまれな元素で全炭素の内、約1兆分の1%しか存在しません。

しかし、地磁気エスカレーションによって磁場が不安定となった場合、地球に降り注ぐ宇宙線の量が増えることで、この炭素14の濃度も上昇すると考えられます。

それが古代のカウリの木の年輪に記録されていたのです。

この年輪を分析することによって、研究グループは、この時期の地球大気がどのように変化していたかの詳細を明らかにすることができたのです。

そしてここからは、これまで謎とされてきた古代のいくつかの痕跡の意味が説明できるといいます。

「42」という数字と奇妙に一致する古代のイベント

「カウリの木はロゼッタストーンのようなもので、世界中の洞窟、氷床コア、泥炭の沼地の環境変化の記録同士を結びつけるのに役立ちます」

今回の研究グループのリーダーを務めた南オーストラリア博物館のアラン・クーパー教授はそのように語ります。

古代カウリの年輪の記録は4万2千年前から異変が発生していたことを示していました。

それは、これまで知られていたラシャンプエスカレーションの磁極反転の時期よりも、かなり以前に地球全体の磁場が非常に弱っていたことを示しています。

これまでの研究では、ラシャンプ地磁気エスカレーションによる地球磁場の強度は、通常の28%まで弱まっていたと考えられていました。

しかし、新しい事実はそれよりも以前の段階で、地球の磁場がわずか0~6%まで弱っていたことを示していたのです。

地球上の記録にはいくつか奇妙な一致があります。

たとえば、オーストラリア本土とタスマニア島では、メガファウナという古代生物がほぼ同時に絶滅していました。

また、人類が残した古い洞窟壁画の記録についても、もっとも古いものは4万2千年前から登場し始めています。

これらは不思議と4万2千年前という時代で一致していました。

人類も被害者、「地球最後の磁極反転」の詳細が明らかに 世界中の空を雷雨とオーロラが覆った!
(画像=SF作家ダグラス・アダムズの作品登場する有名なフレーズ「 生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問」の答え。それは42とされている。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

「すべてが42で一致していました。これは驚くべきことです」

研究者はこのことから、このイベントをイギリスのSF作家にちなんで「アダムス地磁気遷移イベント(あるいは単にアダムスイベント)」と名付けました。

SF作家のアダムスは、自作『銀河ヒッチハイク・ガイド』の中で、「生命、宇宙、そして万物についての究極の疑問の答え」として「42」という数字を取り上げています。

彼の作品の中では、たびたび「42」という数字が象徴的に扱われていて、研究者たちはここに不思議なシンパシーを感じたようです。