
(画像=Credit: livescience、『ナゾロジー』より 引用)
こちらは、イスラエルにあるハイファ国立海洋博物館に50年もの間、保管され続けている2体の石棺です。
1つは冥界の神オシリスの形に、もう1つは天空の神ホルスの形に彫刻されており、中には「人の心臓のミイラが入っている」と言われていました。
ところが、新たに行われた調査の結果、それぞれ全く違うミイラが入っていたことが判明しています。
研究員によると、オシリス型の石棺には、穀物と泥を混ぜた「穀物ミイラ」が、ホルス型の石棺には、ハヤブサと思しき「鳥のミイラ」が保存されていたとのことです。
中身が「心臓」ではありえない理由とは?
同博物館は、ここ数年間、所蔵されているコレクションを精査し、それぞれ最善の保存方法を決める作業を続けていました。
その中で、出くわしたのが2体の小さな石棺です。
しかし、館内に石棺の中身を知っている人はおらず、残された記録にも「人の心臓が入っている」とあるだけでした。
同博物館のロン・ヒレル氏は「保存状態の良さとは裏腹に、石棺の記録は不鮮明で、2000年以上前のものという情報以外には何も分かっていません」と話します。

(画像=オシリス型の石棺を納めていた棺/Credit: National Maritime Museum in Haifa,『ナゾロジー』より 引用)

(画像=Credit: National Maritime Museum in Haifa,『ナゾロジー』より 引用)
また、心臓が入っているという記録は、間違いに思われました。
というのも、古代エジプトのミイラは、基本的に体内の臓器は取り除くものの、心臓だけは残していたからです。
古代エジプト人にとって、感情や思考、意思が宿る場所は脳ではなく、心臓でした。心臓は来世への鍵を握っており、「死者の審判」において心臓が調べられるとされていたのです。

(画像=心臓を計量する様子/Credit: ja.wikipedia,『ナゾロジー』より 引用)
天秤の片方に心臓を、もう片方に「マアトの羽根」を乗せて、もし心臓の方が重ければ、アメミットという怪物に食べられます。軽ければ、来世への転生が約束されます。
そのため、心臓だけが取り除かれて、小さな石棺に入れられているとは考えにくいのです。