原子時計という精密な時計の登場以降、人類は地球の1日の長さ(つまりは自転速度)が非常に不安定でムラがあることを知りました。

うるう秒は1日の長さを補正するためにこれまで27回導入されていますが、そのタイミングは非常に不規則です。

なぜ地球の自転はそんなに不規則なのでしょうか?

この問題について、米国の南カリフォルニア大学(USC)の研究チームは、地震波の測定から地球の内核が1方向へ回転を続けるのではなく、時折反転する振動を起こしていたという証拠を発見しました。

内核の回転が振動しているというアイデアは、以前から存在していましたが具体的な証拠が示されたのはこれが初めてです。

研究の詳細は、2022年6月10日付けで科学雑誌『Science Advances』に掲載されています。

目次
不安定な地球の自転
地球自転が不安定な原因は内核の特殊な回転にあった

不安定な地球の自転

うるう秒とうるう年は何が違うのか?

地球内核はたまに逆回転している証拠が見つかる! 不規則なうるう秒の原因か
(画像=うるう秒の挿入 / Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

わたし達は1年を365日、1日を24時間という単位に区切って生活しています。

しかし、わたし達にとっての時間のリズムは正確にこの周期で繰り返されているわけではなく、地球と他天体(特に太陽)との位置関係によって成立しています。

たとえば地球が太陽の周りを一周する公転周期は、実際には365日より少し長い、365.24日です。

このため、わたし達は4年に1度、2月に1日を追加します。

実際には4年に1度という周期ではさらに細かいズレが生じるため、うるう年は100で割れる年には導入しない、さらに400で割れる年には導入するという細かい法則があります。

(100年周期の世紀の変わり目である2000年は、本来うるう年は必要ない年ですが、400で割れるため例年通りうるう年が導入されています)

このようにうるう年は非常に規則的に導入されており、その法則は多くの人が理解しているはずです。

一方、「うるう秒」はどういう規則で導入されているか理解できているでしょうか?

「うるう年」と「うるう秒」は名前が似ているため、うるう年では補いきれない細かいズレをうるう秒で補正していると勘違いしている人も多いかもしれません。

しかし、この両者は補正している対象が全く異なります。

うるう年が地球の公転周期の補正であるのに対して、うるう秒は地球の自転周期、つまりは1日の長さを補正しているのです。

原子時計という非常に正確な時計が登場したことで、1972年以降、人類はこの精密な時計を基準とした協定世界時(UTC)という標準の時刻を利用するようになりました。

しかし、この時刻は天体観測によって定められる時間(UT1)と徐々にズレが生じてきます。

そしてその差が0.9秒を上回ることになった際、協定世界時に1秒を挿入して補正しているのです。

では、どういうタイミングでこの時間はズレるのでしょうか?

実のところ、ここには明確な規則が存在していません。

地球内核はたまに逆回転している証拠が見つかる! 不規則なうるう秒の原因か
(画像=うるう秒の調整実施日の一部。これを見ても特に法則性は見られない。 / Credit:Wikipedia、『ナゾロジー』より引用)

うるう秒は協定世界時が実施された1972年以降、計27回導入されていますが、基準はあくまでUTCとUT1の差が0.9秒以下になるよう補正するというものであり、うるう年のような規則的な補正をしているわけではないのです。

これは地球の自転が、公転周期のように規則的に変化しているのではなく、非常にムラのある速度で回転していることを意味しています。

なぜ1日の長さは変化するのか?

その原因の一つは、月の潮汐力であるとされています。

地球内核はたまに逆回転している証拠が見つかる! 不規則なうるう秒の原因か
(画像=月の潮汐力により地球の自転速度にはブレーキがかかっている / Credit:SEIKO,うるう年とうるう秒について、『ナゾロジー』より引用)

ただ、月の潮汐力による地球の自転速度の低下は非常に弱いもので、100年間で1.8ミリ秒(1000分の1秒)程度だとされています。

これは5万年でやっと1秒ズレるという計算です。

そのため、この影響だけではうるう秒が必要になるほど1日の時間がズレる説明にはなりません。

さらに、地球の自転速度は単純に遅くなっているだけではないことも明らかになっています。

1990年代の調査では、地球の1日は過去100年間で約2ミリ秒長くなっていることが(自転が遅くなている)ことが示されましたが、2003年に行われた調査では、1日の長さは24時間より1ミリ秒長いという結果が出たのです。

これは1990年より2003年の方が地球の自転は速くなってしまったということを意味しています。

つまり、地球の自転速度はまったく安定していないのです。

地球自転が不安定な原因は内核の特殊な回転にあった

では、なぜ地球の自転速度はそんなに不安定なのでしょうか?

これについては、以前より、潮汐力による海洋の質量分布の複雑さや、地球内部のマントルやコアの運動が関係するためだと考えられていました。

特に地球内部の様子を人間は直接観測することができないため、不明瞭な要因によって複雑に変化していると推察されていたのです。

ただ、直接観測することはできずとも、人類は地震波の伝播の仕方を調べることで、地球内部がどの様な構造になっており、どのように運動しているかを推測してきました。

地球内核はたまに逆回転している証拠が見つかる! 不規則なうるう秒の原因か
(画像=地球の内部構造は地震波の伝播を利用して調べられている / Credit: Doyeon Kim/University of Maryland、『ナゾロジー』より引用)

こうした研究から、地球内部には、冥王星と同じくらいの大きさをした鉄が主成分の内核があり、それが液状の外核の中に浮かんでいることがわかりました。

さらに、1996年に発表された研究では、内核が地球自転より速い速度で回転している可能性が示されたのです。

液状の外核の中に浮かぶ内核が、地球自転より速く回転する可能性は十分に考えられる状況です。

ただ、実際に内核がどれほどの速度で回転しているのかはよくわかっていませんでした。

その後、今回の研究の発表者でもある南カリフォルニア大学の地震学者ジョン・ヴィデール(John Vidale)教授が、米国の大口径地震アレイ(LASA)のデータを使った新しい測定方法により、内核の回転速度が地球自転より約0.1度速いということを明らかにします。

この研究で役立ったのが、冷戦時代に行われた米国と旧ソ連の地下核実験でした。

核実験は実施地点と時刻、さらにその強度に関する正確な記録があり、しかも地球深部まで伝播する巨大な振動を発生させます。

そのため核実験によって生じた振動の観測データからは、非常に精密な地球内部の情報が得られるのです。

地球の内核は地表で測定される地球の自転速度よりも少しだけ速い速度で回転している。

こうした事実から地球の内核は、それを取り巻く外核やマントルの粘性率との関連で、ある程度回転が先行した後、引き戻されて回転が反転する場合があるのではないか、という説が登場しました。

このモデルは地球の自転速度が不安定になる理由を説明できましたが、実際のところ本当にそんなことが起こりうるのかという点において、科学者の間でも意見がわかれていました。

そこでヴィデール教授は、内核の速度を測定した方法を利用して、今回は内核の回転方向が一定であることを明らかにしようと研究を行ったのです。

しかし、結果は教授の予想を裏切るものとなりました。

ヴィデール教授のチームは、1971年から74年に掛けて行われたソビエトの地下核実験と、1969年と1971年にアラスカで行われた地下核実験のデータを用いて、内核の運動について分析しました。

すると、内核は69年から71年にかけて徐々に減速していき、その後の71年から74では回転方向が逆転していたのです。

地球内核はたまに逆回転している証拠が見つかる! 不規則なうるう秒の原因か
(画像=研究は地球の内核が6年周期で地球自転速度を超えた超回転と、反転した服回転をすることを特定した / Credit:USC Graphic/Edward Sotelo、『ナゾロジー』より引用)

「わたし達は、どちらの核実験のデータからも同じ回転方向と速度が確認できるだろうと期待して研究を始めました。

しかし、結果はまったく逆でした。内核が反対方向に動いているのを見つけて、私たちは非常に驚きました」

ヴィデール教授はそのように語り、結果が予想外であったことを強調しています。

しかし、この結果は地球の1日が不規則に伸び縮みする事実と一致しており、またこれが6年周期で極運動の振動が増幅する問題や、地磁気がうろつく問題に対しても説得力のある理論を提供すると述べています。

「内核は固定されておらず、6年ごとに数キロメートル前後に移動しているようだ」

ヴィデール教授は、今後、この内核のプロセスを正確に理解することが、地球の1日の時間変動を理解するための重要なステップになると述べています。

ただ、もう現代では新しい地下核実験が行われることはなく、また今回の研究データを測定したモンタナ州の大口径地震アレイ施設も閉鎖されてしまっています。

今後は不確定な地震データに頼るしか無いため、ここからの調査研究は困難を極める可能性があります。


参考文献

The Earth moves far under our feet: New study shows Earth’s inner core oscillates

1日の長さは変化しているの?(国立天文台)

うるう年とうるう秒について(SEIKO)

地球中心部、地球の自転より微妙に速く回転、研究

元論文

Seismological observation of Earth’s oscillating inner core


提供元・ナゾロジー

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