アルゼンチンのパタゴニアでほぼ完全な状態で約8000万年前のものと思われる竜脚類の胎児の化石が発見されました。

8月27日付けで『Current Biology』に掲載された論文によると、パボル・ヨセフ・シャファーリク大学の研究チームは、X線マイクロトモグラフィという新しい技術を使い、この卵の中の胎児の化石を初めて3D画像として解析することに成功したとのこと。

この化石はまだ卵の殻の中に閉じ込められた状態で、非常に希少価値の高い標本です。また、解析の結果、竜脚類の成体には見られないさまざまな特徴が発見されたのです。

恐竜の幼少期については、まだほとんどわかっていません。これは未だ多くの謎に包まれた恐竜たちの生態を知る重要な資料になるでしょう。

目次
いわくつきの恐竜の卵
竜脚類の胎児に見つかる不思議な特徴

いわくつきの恐竜の卵

今回発見された化石にはちょっとしたいわくがあります。

化石は約25年前、アルゼンチンのパタゴニアで発見されたものだと推定されていますが、正確な出土場所はわかっていません。

それは、この化石がパタゴニアから違法にアメリカへ持ち出されたものだったからです。その後、研究者たちの注目を集めたこの化石はアルゼンチンに送還され、現在はカルメン・フネス博物館に収容されています。

そのため、この化石が元々どこにあったものなのかは現在もわかりません。

アルゼンチンのパタゴニアにあるAuca Mahuevoでは、竜脚類のティタノサウルスの化石や卵が多く発見されています。そのため、この卵もAuca Mahuevoで発見されたものだというのが有力ですが、鉱物構成などは一部一致していません。

竜脚類の胎児に見つかる不思議な特徴

なにはともあれ、この非常に希少な恐竜の胎児の化石は、成体の竜脚類には見られないユニークな特徴を持っており、現在科学者の注目を集めています。

この化石は竜脚類のティタノサウルスの胎児だと考えられています。彼らは長い首に小さい頭を持つ非常に巨大な種です。

希少な恐竜の胎児の化石から奇妙な特徴が見つかる「不自然な位置にツノ」
(画像=ティタノサウルスのイメージ。/Credit:depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

竜脚類は、大きいものだと体長50メートルを超えるものも存在しますが、この胎児は数センチしかありません。

Martin Kundrát氏を筆頭とした研究チーム率いる研究チームは、この化石をX線マイクロトモグラフィという新しい画像処理技術で3D化させました。

希少な恐竜の胎児の化石から奇妙な特徴が見つかる「不自然な位置にツノ」
(画像=Credit:Martin Kundrát et al., Current Biology(2020)、『ナゾロジー』より引用)

この画像の解析からまず目についた特徴は、眼窩が成体のものよりも前方に傾斜していることです。

研究チームはこのことから、「ティタノサウルスの幼体は部分的に両眼視(両目を使った立体視)が可能だったと考えられ、成体よりはるかに優れた視覚を持っていた」と結論づけています。

ティタノサウルスの雛は、両眼視により食べ物や獲物との距離をより正確に判断でき、カモフラージュした捕食者を見つける能力に長けていた可能性があるのです。