1937年、テキサス州南部の川沿いにある岩穴で、ミイラ化した男性の遺体が発見されました。
その後の調査で、男性は1400〜1000年前のどこかで生きていた人物と特定されています。
そして今回、ネブラスカ大学リンカーン校の研究により、男性は深刻な便秘症状で命を落としたことが判明しました。
死の直前の数ヶ月は、おもにバッタを主食にしていたとのことです。
研究の詳細は、来年6月に刊行される『The Handbook of Mummy Studies』に掲載される予定です。
便秘量は1.2kg!死の直前は「バッタ」しか食べれなかった
これまでの研究で、男性は「シャーガス病」という感染症を患っていたことがわかっています。
これは「トリパノソーマ・クルージ」という人獣共通の原虫に感染することで発症し、そのせいで男性は、消化管に深刻な便詰まりが起こっていました。
男性の腸は通常の約6倍にまでふくらみ、「巨大結腸(Megacolon)」と呼ばれる状態になっていたようです。
巨大結腸では食べ物を適切に消化できず、徐々に栄養失調になっていき、自力で歩くことも困難になります。
腸の中には大量の便と未消化の食料が詰まっており、その重さは1,170グラムに達していました。
重度の便秘と栄養失調でまともな生活は送れなかったと見られます。

さらに、走査型電子顕微鏡を用いて遺体を再分析してみると、最期の2〜3ヶ月は、足を取り除いたバッタが主食となっていました。
研究主任のカール・ラインハルト氏は「おそらく男性の家族か仲間が、水分も豊富で消化しやすいバッタの柔らかい部分を与えていたと考えられます。
バッタは水分に加え、タンパク質も豊富なので、適切な判断だったでしょう」と話しています。
それでも、男性の病状がよくなることはありませんでした。
それは腸内の「プラント・オパール(植物の化石)」を見るとわかります。


プラント・オパールとは、植物が土壌から吸収したケイ酸からなるガラス質の細胞体で、普通は人や動物の腸内を無傷で通過し、便として排出されます。
ところが男性の場合、プラント・オパールに信じがたいほどの圧力がかかって押しつぶされていたのです。
男性の腸がいかにパンパンに詰まっていたかを物語っています。
ラインハルト氏は「これは病理学の歴史の中でもきわめて珍しく、男性の腸内の圧力と閉塞度は異常なレベルに達していました」と述べています。
これほどの苦しみの中で、数ヶ月間を生き抜いたことが奇跡でしょう。
参考文献
livescience
ancient-origins
提供元・ナゾロジー
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