本来なら捨てられるコーヒーパルプ(coffee pulp)が、森林再生のための「魔法の肥料」となりそうです。
スイス・チューリッヒ工科大学、ハワイ大学マノア校の研究チームは「コーヒー豆生産で廃棄される果肉部分(パルプ)を有効利用できないか」と考え、荒廃した農地に散布する実験を敢行。
その結果、わずか2年で荒廃地が森林として完全に復活することが明らかになりました。
ゴミとして扱われていたコーヒーパルプが、森林保護の鍵となるかもしれません。
研究は、3月28日付けで『Ecological Solutions and Evidence』に掲載されています。
2年で森林率が80%まで激増!
世界中で愛飲されるコーヒーの豆は、アカネ科のコーヒーノキになる赤い種子・コーヒーチェリーから得られます。
コーヒーチェリーの中身は外側から、外皮・果肉・内果皮(パーチメント)・銀皮(シルバースキン)・種子となっており、コーヒー豆となるのは種子だけです。
あとはたいてい廃棄されるのですが、その中の果肉の部分を「コーヒーパルプ」といいます。

研究チームは2018年から、コスタリカ南部のコト・ブルス郡にある荒廃地を対象に、コーヒーパルプの散布実験を開始しました。
この土地は1950年代から急速な森林伐採が進み、2014年には森林被覆率が25%まで激減しています。
実験では、35×40メートルの土地を2つに分け、片方を実験群として、トラック30台分のコーヒーパルプを厚さ50センチで敷き詰めました。
もう片方はコントロール群として手は加えていません。
それから2年後、結果は劇的なものでした。

2年後の森林被覆率は、コントロール群が20%であったのに対し、コーヒーパルプを撒いた土地(実験群)は80%まで激増していたのです。
上画像は、(A)パルプの散布直後、(B)実験開始から2年後のコントロール群、(C)2年後の実験群、(D)の上半分は1年後のコントロール群、下半分が1年後の実験群です。
その差は歴然であり、樹木の平均的な高さもコントロール群の4倍に達していました。

また、土壌の化学分析をした結果、実験群における炭素、窒素、リンなどの栄養素が、コントロール群と比較して有意に上昇していることも判明しています。
さらに実験群では、土地を支配していた侵略種の植物が一掃され、もとの固有種が再び自生していたのです。
侵略種の植物は、しばしば森林拡大の障壁となっており、コーヒーパルプがその駆除に使えることも示されました。
対して、コントロール群は外来種に支配されたままとなっています。