オーストラリア国立大学(ANU)の物理学者は、画期的な発見をしました。
科学雑誌『Journal of Geophysical Research:SolidEarth』に掲載された新しい研究によると、地球の「もっとも内側のコア」に新たな層が存在することを確認したと報告しています。
伝統的に地球の内部は、地殻、マントル、外核、内核の4層として描かれていましたが、今回の報告は教科書の記述に修正を求めることになるかもしれません。
直接見えない地球の内部構造
地球は45億年前の形成時は、溶けた岩の塊でした。
それが徐々に外側から冷えて固まり地殻が作られ、さらにその内側にいくつかの層が形成されました。
このような地球の内部構造を日本地質学会のページでは卵にたとえて説明されています。

卵殻にあたるもっとも外側の層が地殻で地下5~70kmまでを覆っています。
次に卵白に相当するのが、マントルで主に溶けた花崗岩や玄武岩からできており、地下約2900kmまで広がっています。
卵黄にあたる中心部が、地球のコアであり、これは金属鉄からできています。
コアは外核と内核の2層に分かれていて、外側の外核は液体状態で深さ約2900~5100kmまで続いています。それより内側が内核です。
内核は約5000℃もある高温ですが固体の鉄であり、その大きさは月よりも小さく、地球総体積の約1%程度だと推定されています。
このような地球の内部構造が、なぜわかるのかというと、それには地震波を利用します。
地表近くで起きた地震の振動を震源から遠く離れた地点から測定することで、その途中にある内部構造が、どのような物質でできているか推測するのです。

地震波だけでは当然地球内部の具体的なことはわかりません。
他にも地質学では、惑星の材料を伝える隕石の欠片や、地殻変動や火山活動によって地表に送られてきた地球深部の岩石を調べたり、高温・高圧の地球内部環境を実験室で再現するなどして、研究を進めています。
こうした間接的な研究の成果によって、現在地球の内部は大きく4つの層にがあるとわかっているのです。
しかし、この地球の内部構造に、新たな層が加えられることになるかもしれません。
地球中心の新たな層
実は地球の内核には、さらに別の層が存在するのではないかという説は、数十年前から提案されていました。
ただ、この説には明確な証拠が不足していました。
そこで、今回の研究チームは特別な検索アルゴリズムを使い、国際地震センターに集められた何十年分もの地球内部を伝わる地震波の観測データと、内核に関する何千ものモデルとを照合する作業を行ったのです。

地震波は構成の異なる材料を伝わるとき、その特性を変化させます。
この調査の結果、どうも内核のさらに内側である、地下約5800kmの当たりで、鉄構造の変化を示す証拠が見つかったというのです。
これは地球のもっとも内側にあると考えられていた内核が、さらに私たちのまだ知らない未知なる層に分かれている可能性があることを示しています。
「非常にエキサイティングな発見であり、私たちは今後、教科書の記載を書き直す必要に迫られるかもしれない」
今回の研究筆頭著者であるオーストラリア国立大学(ANU)地球科学研究科のジョアン・スティーブンソン氏はそのように語っています。
この新たに発見された第2の内核層は、地球の歴史において異なる2つの冷却イベントによって形成されたことを意味しています。
しかし、まだその詳細は不明です。
宇宙の彼方よりも、人類にとって見ることの難しい場所が、地球深部の様子です。
今回の発見は、まだその可能性を示すかすかな証拠に過ぎません。確実なことがわかるのは、まだ先のことでしょう。
しかし、私たちの常識は、日々の研究によって常にアップデートされています。研究者が興奮して語るように、理科の教科書は近いうちに書き換わることになるのかもしれません。
参考文献
Scientists Detect Signs of a Hidden Structure Inside Earth’s Core(sciencealert)
元論文
Evidence for the Innermost Inner Core: Robust Parameter Search for Radially Varying Anisotropy Using the Neighborhood Algorithm
提供元・ナゾロジー
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