かつて地球の海に実在した最恐の生物、メガロドン。

全長は15〜18メートルに達したと推定され、巨大な口と鋭い歯をもって当時の食物連鎖の頂点に君臨していました。

もし現代にメガロドンが生きていたら、マリンスポーツにも大きなリスクが追加されていたかもしれません。

幸運なことにメガロドンはすでにいませんが、しかし、メガロドンを絶滅に追いやったかもしれない生物は、今も海に存在します。

それが、ホオジロザメです。

映画『ジョーズ』でお馴染みのホオジロザメは確かに恐い生物ですが、サイズはメガロドンの3分の1程度しかありません。

そんなホオジロザメが、一体どうやってメガロドンを絶滅に追いやったのか?

独マックスプランク進化人類学研究所(Max Planck Institute for Evolutionary Anthropology)の新たな研究では、ホオジロザメが餌の狩猟競争で、メガロドンに優ったことが示唆されました。

研究の詳細は、2022年5月31日付で科学雑誌『Nature Communications』に掲載されています。

目次
歯の化石から「食生活」を解き明かす
メガロドンの餌場がホオジロザメに奪われた?

歯の化石から「食生活」を解き明かす

サメ自体は約4億年前から存在しますが、メガロドンが生きた時代は「新第三紀(約2300万〜258万年前)」に当たります。

新第三紀は、中新世(約2300万〜500万年前)と鮮新世(約500万〜258万年前)に分かれ、メガロドンは、鮮新世の中期(約360万年前)に絶滅しました。

メガロドンの絶滅については、気候変動や環境変化など、多くの要因が指摘されていますが、中でも”食生活と狩猟競争”に強いスポットが当たっています。

古代の生物の食生活は、歯の化石さえあれば、それほど難航せずに明らかにすることができます。

特に、骨格のほぼすべてが軟骨でできているサメの場合、歯の解析が何よりも肝心です。(軟骨は化石として残りにくい)

メガロドンを絶滅に追いやったのは「ホオジロザメ」だった⁈
(画像=メガロドンの歯(左)とホオジロザメの歯(右) / Credit: MPI for Evolutionary Anthropology、『ナゾロジー』より引用)

その仕組みは次のとおり。

まず、ある環境中に存在する同位体(原子番号が同じで、中性子の数が異なる原子)が、そこに生息する小さな生物に取り込まれます。

その小さな生物が大きな生物に食べられると、同位体が捕食者の大きな生物に吸収されます。

この吸収された同位体の一部は、食べた側の歯や骨に含まれるリン酸カルシウムと置き換わります。

こうした一連の流れを考慮すれば、歯に残った同位体の痕跡から生物の食生活を知ることができるのです。

メガロドンを絶滅に追いやったのは「ホオジロザメ」だった⁈
(画像=サメの歯に含まれる亜鉛を調査する様子 / Credit: MPI for Evolutionary Anthropology、『ナゾロジー』より引用)

しかし、メガロドンやホホジロザメの場合、彼らが何を食べていたのか正確にはわかっていません。

一方、古代の海洋哺乳類の歯や骨に含まれる「亜鉛」の同位体比を調べた研究によると、ある生物の栄養段階が高いほど(食物連鎖のピラミッドでその生物が上位にあるほど)、亜鉛の同位体比の値が低いことがわかっています。

メガロドンを絶滅に追いやったのは「ホオジロザメ」だった⁈
(画像=食物連鎖のピラミッドと栄養レベル / Credit:東京大学大気海洋研究所、『ナゾロジー』より引用)

これをヒントに、研究チームは今回、メガロドンとホオジロザメの歯に含まれる亜鉛を分析しました。

メガロドンの餌場がホオジロザメに奪われた?

本研究では、メガロドンを含む13種の絶滅したサメの歯と、水族館などに生息する20種の現生ザメの歯を集め、そこに含まれる亜鉛同位体比のデータベースを作成。

そして、メガロドンとホオジロザメの歯を比較したところ、非常に興味深い結果が得られています。

まず、出現初期のメガロドンとその祖先の歯を調べてみると、明確にそれぞれの食物連鎖の上位を占める、まさに頂点捕食者であったことが示されました。

ところが、鮮新世(約500万〜258万年前)初期のメガロドンでは、同時代に存在した、はるかに小さいはずのホオジロザメと栄養レベルが一緒だったのです。

これはメガロドンの栄養レベルが下がり、ホオジロザメの栄養レベルが上昇したことで起きた現象でした。

この結果を考えると「両種のサメの狩猟場がいくらか重なっており、資源を奪い合っていたことを示唆する」と、研究チームは指摘します。

さらに、メガロドンの栄養レベルが初期の頃から落ちていることは、つまり、ホオジロザメに餌資源の多くを奪われていた可能性が高いと推測できます。

もし得られる餌の量が両者同程度に落ち着いたとしても、体の大きいメガロドンはより多くの食料を必要としたはずです。

その直後にメガロドンが絶滅していることを考えると、巨大な体を持つ彼らにとって栄養レベルの低下はかなりの痛手だったと見られます。

メガロドンを絶滅に追いやったのは「ホオジロザメ」だった⁈
(画像=ホオジロザメによって餌が減った可能性 / Credit: jp.depositphotos、『ナゾロジー』より引用)

もちろん、ホオジロザメだけがメガロドン絶滅の要因ではありません。

「メガロドンの絶滅には、気候変動や環境変化、生態系の崩壊など、複合的な要因によって引き起こされたと考えられる」と、研究チームは述べています。

しかし、ホオジロザメの勢いが、メガロドン衰退の一因になった可能性はかなり高いようです。


参考文献

This Animal May Have Helped Drive The Fearsome Megalodon to Extinction

Great white sharks may have contributed to megalodon extinction

元論文

Trophic position of Otodus megalodon and great white sharks through time revealed by zinc isotopes


提供元・ナゾロジー

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