最近は急激な減光のために、数多くの詳細な研究が行われたベテルギウスですが、さんざん研究されていたにもかかわらず、実はそのサイズと距離が間違っていたかもしれません。

10月13日の科学誌『The AstrophysicalJournal』に発表された研究では、ベテルギウスの大きさはこれまでの推定より3分の2程度しかなく、それに従って再計算された地球との距離は25%近くなるといいます。

さんざん議論されていた星の距離とサイズが今更変更されるというのは困惑してしまいますが、実際とのところベテルギウスのような巨大な脈動星のサイズは不明な点が多く、それほど驚くべきことではないようです。

目次
不明瞭な星「ベテルギウス」
最新のベテルギウスのサイズと地球までの距離

不明瞭な星「ベテルギウス」

オリオン座ベテルギウスの”距離とサイズ”が間違っていた!? 星のサイズは実はまだ定まっていないものが多数、超新星爆発への影響はいかに?
(画像=超大型干渉電波望遠鏡によるベテルギウスの光球サイズと恒星大気の対流。 / Credit: NRAO/AUI/NSF、『ナゾロジー』より引用)

有名なベテルギウスのような星でも、そのサイズについて不明な点が多いというのはちょっと意外な事かもしれません。

しかし、ベテルギウスのような赤色超巨星は以下のような理由から、そのサイズを正確に測定することが困難になっています。

1つはベテルギウスが脈動星のため、時間とともに大きさを変化させてしまうため。そしてもう1つは、ベテルギウスが明確な縁と呼べるものを持っていないためです。

縁がない、というのは赤色超巨星のような晩年の星は表面から物質の放出を行っていて、不均一で複雑な大気を持っています。このため電磁スペクトルで直径を測定しても誤差が出てしまい、また光球の縁の明るさも変化するため、明確に星の縁を定義することができないのです。

研究者から言わせると「ベテルギウスはぼやけた縁を持つ脈動する塊」です。教科書に載っているような滑らかな球体の星は、そこには無いのです。

それでも1920年から、ベテルギウスは干渉計を使った観測によってそのサイズの測定が行われてきました。

その後何度か修正が行われていますが、推定されたベテルギウスの角直径は約47ミリ秒(太陽の約1300倍)で、太陽系に置いた場合木星軌道を飲み込むほどの大きさだとされてきました。

またこうしたサイズの推定とともに測定された地球との距離は、約724光年でした。

最新のベテルギウスのサイズと地球までの距離

今回の研究はコロナ質量放出(太陽コロナ中のプラズマが大量に放出される現象)などの収集データから、星の活動モデルを開発し、それをもとに星の寿命を推定できるようにしました。

このモデルを元に、研究は赤色超巨星の半径を推定することが可能になり、ここからベテルギウスの新しいサイズ推定も行われたのです。

その結果ベテルギウスのサイズは、これまで考えられていた大きさの約3分の2しかない太陽のおよそ750倍の直径と示されたのです。

このサイズを元に地球からの距離を再計算すると、これまでより25%ほど近い530光年という結果になりました。

思っていたよりもベテルギウスは小さく、そして地球に近い星だったのです。