イングランド北部・ノーサンバーランドにある遺跡にて、5〜6世紀のキリスト教の「聖杯(英: Chalice)」の断片が発見されました。
断片は全部で14個見つかっており、無数の文字やシンボルが刻み込まれています。
聖杯の断片は、ローマ帝国時代に建てられた要塞跡から出土しており、イギリス国内で見つかった聖杯としては最古のものです。
研究主任のアンドリュー・バーリー博士は「イギリスでのキリスト教の広まりを理解する上でも貴重な発見」と評しています。
目次
イギリスで見つかった最古の「聖杯」
聖杯に記された「シンボル」の意味は?
イギリスで見つかった最古の「聖杯」
聖杯が見つかった場所は、スコットランドとの境界線近くにある「ハドリアヌスの長城」の直下、「ヴィンドランダ要塞」の教会跡です。
ハドリアヌスの長城は、122年にローマ皇帝ハドリアヌスの命令により建設が開始されました。
その後、ローマ人は約330年間、同地に滞在しましたが、5世紀初めにその地を去り、集落だけが後に残されています。聖杯が出土した教会は、ちょうどその頃の5〜6世紀に建てられたものです。

(画像=ハドリアヌスの長城(赤線)/Credit: theguardian、『ナゾロジー』より引用)
これまでに同遺跡では、拳闘用のグローブやシューズ、ブーツなどの遺物が見つかっていますが、聖杯が見つかったことはありませんでした。
これはローマ人が去った後も、同地の集落でキリスト教信仰が続いていたことを裏付けています。
キリスト教は313年のミラノ勅令によってローマ帝国の国教となり、そこから各地に広まっていきました。そのため、聖杯の断片は、イギリスにおけるキリスト教信仰の初期の遺物と考えられます。

(画像=「ヴィンドランダ要塞」の遺跡/Credit: Jaime Pharr/Alamy、『ナゾロジー』より引用)