火星は現在水のない乾いた惑星ですが、かつては水に覆われていたという確かな証拠があります。

では、その水はどこへ行ってしまったのでしょう?

3月16日に科学雑誌『Science』で発表された新しい研究は、火星の水の30%~99%が地殻内に捕らわれた可能性があると報告しています。

火星の水は大気とともに宇宙へ消失してしまったというのが、これまでの通説です。

新しいモデルは、この考えに意義を申し立てています。

目次
かつては水の惑星だった
地殻に閉じ込められた火星の水

かつては水の惑星だった

火星の水は宇宙へ逃げたのではなく地殻に取り込まれた
(画像=40億年前の火星のイメージ。 / Credit:ESO/M. Kornmesser/N. Risinger,『ナゾロジー』より 引用)

火星は約40億年前、深さ100~1,500メートルの海に覆われていました。

これは、地球の大西洋のほぼ半分に相当する体積の海です。

しかし、現在の火星は水がどこにも見当たらない乾いた荒野となっています。

大量の水は一体どこへ行ってしまったのでしょう?

多くの科学者は、火星の低重力と地場を消失を関連付けて、火星の水が大気とともに太陽風に飛ばされて宇宙空間へ流出してしまったと考えています。

つまり、かつてあった火星の水は、ほとんどがもうこの惑星のどこにも残っていないと思われるのです。

しかし、今回の論文の筆頭著者である米国カリフォルニア工科大学の研究者エヴァ・シェラー氏によると、この大気散逸説は、火星にかつて存在した水量の消失を完全に説明できていないといいます。

研究では、火星探査機や、火星から飛来した隕石などを分析して、水素の(D/H)比に着目しています。

これは重水素と軽水素の比率を表す値です。

水は酸素と水素が結びついて作られていますが、このうち水素はすべてが同じ構造なわけではありません。

水素には2つの安定同位体があります。1つは陽子のみの軽い原子核を持った軽水素。もう1つは、陽子と中性子でできた重い原子核を持つ重水素です。

ただ、この2種の水素の比率は圧倒的に軽水素が多く、重水素の割合は0.02%です。

もし、火星の水が宇宙に吹き飛ばされたと考えた場合、軽水素(プロチウムともいう)の方が、重水素より簡単に重力を逃れて飛ばされるはずなので、通常のD/H比と比べて、重水素の割合が大きくなってくるはずです。

しかし、研究チームの分析の結果、現在確認できる火星のD/H比では、大気のみを介した水の消失は説明できません。

では、太陽風に吹き飛ばされたのでないとしたら、火星の水はどこへ消えたのでしょうか?

研究チームは、これが火星の地殻に閉じ込められたと考えています。