人類が初めて遭遇した恒星間天体「オウムアムア」は、あまりに奇妙な特徴が多いため、その起源はエイリアン文明だとか、さまざまな説が唱えられてきました。
しかし、ここへ来てやっとその存在を自然に説明できる理論が登場しました。
3月16日に科学雑誌『Journal of Geophysical Research:Planets』で発表された2つの論文は、オウムアムアがおそらく他星系の冥王星に似た惑星の一部であると報告しています。
パート1とパート2に分けて発表されたこの論文が、謎の星間天体の最終解決となるのでしょうか。
目次
エイリアンの文明が起源とも言われた謎の彗星
オウムアムアが奇妙な理由
エイリアンの文明が起源とも言われた謎の彗星

オウムアムアは極方向から太陽系に侵入してきた、恒星間天体です。
恒星間天体とは、星間空間をわたって異なる星系間を移動する物体を指します。
こうした天体と人類が遭遇したのは、オウムアムアが初めてです。
名前はハワイ語で「最初の使者(あるいは斥候)」を意味しています。これは発見した天文台がハワイにあったためです。
人類がこの存在に気づいたときには、すでにオウムアムアは地球から時速31万km以上の速度で離れていくところでした。
そのため、このまれな天体を科学者がじっくりと観測して調べる時間はほとんどなかったのです。
現在オウムアムアは、遠く離れすぎてしまい既存の技術では観察することができません。
そのため、この天体は彗星によく似ていましたが、いくつかの点が非常に独特だったので、その起源についてさまざまな憶測が横行しました。
最近は、ハーバード大学の研究者アビ・ローブ氏がエイリアン文明が起源であるという説を発表しています。
しかし、科学の世界では、科学者は安易に結論に飛びつかないよう心がけることが重要とされています。それは科学者としての責任でもあります。
オウムアムアは発見されてまだ3年程度の天体で、この期間は科学が新しい発見を理解する時間としては特に長いものではありません。
自然に説明できる理論をすべて出し尽くしたため、万策尽きてエイリアン文明起源にすがるというには、さすがに早すぎます。
そこで、アリゾナ州立大学の2人の天体物理学者、スティーブン・デッシュとアラン・ジャクソンは、オウムアムアの起源を自然に説明できる理論を考えました。
彼らはまず、オウムアムアの観測から、彗星と異なる特徴を明確に決定する作業からはじめました。
オウムアムアが奇妙な理由
オウムアムアは当初、彗星に分類されていましたが、氷でできているようには見えず、彗星の尾に代表されるようなガスの噴出が見られませんでした。
形状は長さが4キロメートルなのに対して、幅はわずか34.75メートルと細長い棒、あるいは平たいパンケーキのようで、これまで観測されたことのある彗星や小惑星の形状と一致しません。
また、オウムアムアは太陽を通り過ぎた後、急に軌道を曲げている様子が観測されています。
これは彗星の氷が太陽の熱で蒸発することで生まれるロケット効果と考えられますが、その推進力の強さは通常の彗星よりかなり強力で、その理由を説明することができていません。

特に通常の小惑星などは、減速していきますが、オウムアムアは逆に加速していくように見えました。
このことが、ローブ氏がオウムアムアはエイリアン文明の宇宙船であると考える根拠の一つになっています。
このように、オウムアムアは彗星によく似ていましたが、これまでに太陽系で観測されたどの彗星とも違うものだったのです。
これらを自然に説明するためには、一体どのようにこの天体を理解したら良いのでしょうか?