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宇宙で広く重力マイクロレンズを探る「OGLE(オーグル)」
地球サイズの自由浮遊惑星の最初の発見
宇宙で広く重力マイクロレンズを探る「OGLE(オーグル)」
「もし、1つの天体の光源に絞って重力マイクロレンズが起きるのをじっと待っていたら、自由浮遊惑星を発見するの100万年近く待たなければならないでしょう」今回の研究の主執筆者であるカリフォルニア工科大学のポスドク研究者プシャメク・モルズ氏はそう語ります。
しかし、幸いなことにモルズ氏のチームは研究のために1つの星を観測する必要はありませんでした。彼らは何億もの星を一挙に観測したのです。
これを可能にしたのはポーランドのワルシャワ大学が主導する重力マイクロレンズを発見するプロジェクト「OGLE(オーグル)」でした。
このプロジェクトはもともと重力レンズを利用して暗黒物質を発見するということが主目的でしたが、1992年以降28年以上に渡って、最大かつ最長の空の調査を行っており、少なくとも17個の太陽系外惑星を発見しています。
モルズ氏のチームもこのOGLEの観測を利用して、天の川中心部の重力マイクロレンズの兆候を探したのです。

こうしてチームは2016年6月に、これまででもっとも短い重力マイクロレンズ現象を銀河系のもっとも星が密集したエリアから発見しました。
それは地球からは2万7千光年離れた場所で、約42分間だけ光が明るくなっていました。
重力マイクロレンズ現象の持続時間は、そこにある天体の質量と関連しています。この観測データから計算すると、問題の天体は地球とほぼ同一か、小さくとも半分程度の質量で、周囲8天文単位(地球ー太陽間を基準にした宇宙の距離単位)以内のどの星にも属していませんでした。
それはほぼ確実に、小さな自由浮遊惑星だと確認されたのです。
地球サイズの自由浮遊惑星の最初の発見
惑星形成理論に従えば、銀河には輝く恒星の数を上回る数千億もの自由浮遊惑星があり、その大部分は地球質量以下のものだと予想されています。
しかし、実際この予想に従った地球質量以下の自由浮遊惑星は、今回が初めての発見です。
「アインシュタインの理論によって、銀河系に浮かぶ小さな岩石の欠片を発見できたのは本当に驚きです」とモルズ氏は述べています。
この自由浮遊惑星がどこからやってきたのか? もともとはどの星系に属し、そこからどれだけ離れてきたのかは、現在の技術ではわかりませんが、これは長年議論されてきた惑星形成の理論を証明する最初の証拠となるものかもしれません。
NASAのナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡(2020年代半ばに打ち上げ予定)が稼働すれば、今回のようなささやかなマイクロレンズをはるかに効率的に探すことができると言います。
まだほとんど見つかっていない孤独な惑星の秘密は、今後いろいろと明らかになっていくのかもしれません。
それにしても、何にも属さず宇宙を漂う惑星とは、なんだかロマンを感じます。そんな自由な生き方もありかもしれないと、ふと思ってしまいますね。
参考文献
University of Warsaw
提供元・ナゾロジー
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