地球は太陽系の一員で、太陽の周りを離れることなくずっと回り続けています。
私たちの知る多くの惑星は、そんな星系に属するメンバーです。しかし、宇宙にはどの星系にも属さず、1人孤独に銀河を旅する自由な惑星も存在するのです。
10月29日付で科学誌『Astrophysical Journal Letters』に掲載された新しい研究は、そんな自由浮遊惑星について地球と同サイズのものを発見したと報告しています。
これまで発見された自由浮遊惑星は木星の数倍という巨大なものばかりでした。今回の研究はこれまでで最小サイズの自由浮遊惑星を発見したことになります。そしてそんな惑星は、宇宙でもっともありふれている可能性があるのです。
目次
自由に宇宙を旅する孤独な惑星
重力マイクロレンズ効果で探す自由浮遊惑星
自由に宇宙を旅する孤独な惑星

現在4000を超える太陽系外惑星が発見されていて、それは皆、地球のように星を周回しています。
しかし、惑星の形成と進化の理論では、必ずしも惑星は何らかの星に重力的に束縛されている必要はないことを示唆しています。
いずれの星系にも属さずに孤独に宇宙を漂う惑星のことを「自由浮遊惑星(英:rogue planet)」と呼びます。
こうした惑星が形成される理由は、星の誕生と同様に宇宙を漂うガスや塵の雲から初めから孤立して生まれる場合や、もともとは星系に属して誕生したけれど別の天体との衝突などによって、星系から押し出されてしまった場合などが考えられます。
こうした自由浮遊惑星は、現在のところはほとんど発見されておらず、見つかったものは木星の2倍から40倍(木星は地球の300倍)の質量を持つ巨大な惑星ばかりです。
しかし、今回の研究では地球サイズの自由浮遊惑星が初めて発見されました。
重力マイクロレンズ効果で探す自由浮遊惑星
私たちが系外惑星を探す場合、それは所属する星へ及ぼす重力的な影響(視線速度法)や、星の前を横切ることで光を遮る食(トランジット法)を利用しています。
自らはほとんど光を発することもなく、恒星に比べればはるかに小さい惑星を遠くの宇宙から見つけ出すには、近くの恒星の助けが必要なのです。
では、どの星系にも属していない孤独な惑星は、一体どうやって発見すれば良いのでしょう?
これにはアインシュタインの一般相対性理論の効果で生じる現象「重力レンズ」を利用します。

これは巨大な質量の物体が地球の観測者と、遠い天体の間を通過するとき重力によって背後の天体の光を偏光させて虫眼鏡のように集める現象です。
これによって遠い天体の光が、一時的に増して見えるのです。
もっとも惑星レベルの重力では、生み出される重力レンズはささやかなものです。そのため自由浮遊惑星を発見するためのこの方法は「重力マイクロレンズ法」と呼ばれています。
また、光を曲げる物体が小さければ小さいほど、星の明るさが変化する時間は短くなります。
木星の数倍の質量を持つ惑星の場合、数日ほど背後の天体が明るくなることがありますが、地球サイズの場合は数時間以下しか効果が続きません。
広い宇宙からこのささやかな変化を見つけ出すのは非常に骨の折れる作業です。そのため、これまでは木星の数倍以上の自由浮遊惑星が、僅かな数発見されているに過ぎませんでした。