古生物界に、ニューフェイスが仲間入りしました。
トロント大学(University of Toronto)、ロイヤルオンタリオ博物館(ROM)はこのほど、カナダ・オンタリオ州南部にあるシムコー湖(Lake Simcoe)の石切り場で、絶滅した古生物の新種の化石を発見したと発表。
本種は、約4億5000万年前のオルドビス紀に生息していたマーレラ類(marrellomorph)という、絶滅節足動物の一種であることが判明しています。
目がなく、竹馬のような脚で海底を移動していたようです。
研究の詳細は、2022年3月24日付で科学雑誌『Journal of Paleontology』に掲載されました。
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節足動物の進化の穴を埋める「ミッシング・リンク」となるか
節足動物の進化の穴を埋める「ミッシング・リンク」となるか

この奇妙な節足動物の化石は、昨年夏、カナダ東部のインフラサービス会社であるトムリンソン・グループ(Tomlinson Group)が所有する採石場にて発見されました。
研究チームは、発掘を許可してくれた同グループに敬意を表し、新種の学名を「トムリンソヌス・ディミトリ(Tomlinsonus dimitrii)」と命名しています。
驚くべきは、T. ディミトリの体に硬い部分がないにもかかわらず、化石の保存状態がきわめて良好だった点です。
一般に、骨や貝殻などは保存されやすいですが、皮膚や筋肉のような軟組織は地中で分解され、めったに化石として残りません。
研究主任のジョセフ・モイシューク(Joseph Moysiuk)氏は「この場所では、体の一部が鉱物化した棘皮動物の化石はよく見つかりますが、軟組織ばかりの生物が見つかるとは思いもしませんでした」と話します。

T. ディミトリの全長は約6センチで、手のひらに収まるほど小さいです。
頭部に鳥の羽のような突起を2本持ち、同じものが後部にも生え出ています。
昆虫やクモなどの節足動物に似た体節があり、複数の手足を持ちます。
最も目を引くのは、頭の下に伸びた極めて長い一対の脚で、先端が二又に分かれています。
おそらく、この2本の脚を竹馬のようにして、海底を移動していたのでしょう。
また、目の痕跡がまったくないため、盲目であった可能性が高いようです。

モイシューク氏によると、T. ディミトリは、過去にバージェス頁岩で発見されたマーレラ・スプレンデンス(Marrella splendens)という絶滅節足動物に似ているとのこと。
バージェス頁岩は、約5億500万年前(古生代カンブリア紀中期)に当たるカナダの化石地層で、古代海洋生物の化石を多産していることで有名です。
M. スプレンデンスは、当時生息していたマーレラ類・マーレラ属に分類され、同属ではこの1種のみしか知られていません。

研究チームは、今回の発見が「マーレラ類のグループにおける化石記録のミッシング・リンクを埋める助けになる」と期待しています。
T. ディミトリの化石標本は現在、ROMのコレクションとして保管されており、今後、同博物館の展示会「Dawn of Life」で一般公開される予定です。
参考文献
This Weird-Looking Aquatic Arthropod Didn’t Have Eyes And Used ‘Stilts’ to Get Around
元論文
A new marrellomorph arthropod from southern Ontario: a rare case of soft-tissue preservation on a Late Ordovician open marine shelf
提供元・ナゾロジー
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