多摩川で魚の大量死が発生

東京や神奈川を貫流する関東地方屈指の大河・多摩川。ここで今月5日、魚が大量に死んでいるのが発見されニュースとなりました。

河川沿線の市民からの通報をうけ、国土交通省京浜河川事務所の職員が現場を確認したところ、府中市の是政橋から稲城市の稲城大橋までの1.5kmにわたり、数百匹のコイやフナが死んで浮いていたといいます。その数は是政橋付近で約100匹、稲城大橋付近で約500匹にものぼったそうです。

度々起こる魚の『夏の大量死』の原因は? 有害物質の検出はナシ
(画像=是政橋から見た多摩川(提供:PhotoAC),『TSURINEWS』より 引用)

また、神奈川県側の川崎市稲田取水所付近でも、約200匹の死骸が見つかったといいます。稲城や狛江の市民からも「川に魚が浮いている」との通報が次々と寄せられたそうです。(『多摩川で魚大量死、1.5キロにわたり 水中酸素低下か』朝日新聞 2021.8.7)

度々発生する「真夏の大量死」

実は、このような「真夏の魚大量死」は近年でも全国的にたびたび発生しています。

例えば2017年には、千葉県木更津市を流れる平川の水位調節用ため池で、フナやコイなどの淡水魚約200匹が死ぬという事件が起こっています。2010年には三重県の中ノ川で、数万匹のコイやフナ、ボラの死骸が浮かび上がり、河川を埋め尽くして大きなニュースになりました。

度々起こる魚の『夏の大量死』の原因は? 有害物質の検出はナシ
(画像=死んで浮かぶフナ(提供:PhotoAC),『TSURINEWS』より 引用)

本州だけではなく、2005年には沖縄の河川でも発生しています。こちらの事件ではなんと、熱帯原産で暑さに強いはずのティラピアが大量に死んでしまったそうです。  

大量死はなぜ起こる?

今回多摩川で発生した事象に関して、河川事務所が大量死発生箇所の河川の水質検査を行ったところ、有害物質などは検出されなかったといいます。そのため同事務所はこの大量死の原因を「水中の酸素が少なくなっていた」と説明しています。

一般的な物理法則として、固体を水に溶かす際は水温が高いほうがよく溶けるのですが、気体はその逆で水温が低いほうが溶解度が高まります。そのため真夏の暑い時期に河川の水温が上がると、溶存可能な酸素の量が減り、水中が酸欠状態になってしまいます。

度々起こる魚の『夏の大量死』の原因は? 有害物質の検出はナシ
(画像=日差しに照らされて水温が上がった川は魚にとって地獄(提供:PhotoAC),『TSURINEWS』より 引用)

また夏場は日照時間が長くなり、日差しが強くもなるために植物プランクトンが増え、消費酸素量が多くなることも、水中の酸欠に拍車をかけます。これらの要因により必要な酸素を得られなくなった魚たちが次々と死に、市民の目に触れる形になったのでしょう。

温暖化で気温上昇が著しい中、今後も同様の大量死は増えていくものと考えられています。

<脇本 哲朗/サカナ研究所>

提供元・TSURINEWS

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