私たちの天の川銀河は、過去にいくつもの小さい銀河が合体して形成されています。

11月20日に科学雑誌『Monthly Notices of the Royal Astronomical Society(王立天文学会月報)』で発表された新しい研究は、100億年近く前の天の川銀河形成初期に衝突した銀河の痕跡を発見したと報告しています。

これは天の川銀河の中心部に隠されていたもので、宇宙の歴史を語る化石銀河と呼べるものです。

目次
天の川銀河形成の歴史
化石銀河「ヘラクレス」
天の川銀河のまだ知られていない歴史

天の川銀河形成の歴史

この動画は天の川銀河の形成を130億年前から現在までの時間でシミュレーションしたものです。

このシミュレーションを見ると、主銀河となった天の川銀河に、いくつもの小さな銀河が合流し、徐々に大きな銀河へと成長していくのがわかります。

天の川銀河はいくつもの銀河が衝突し合併して形成されました。

合併した古い銀河の名残は、銀河ハロー(天の川銀河の外側を包み込むまばらな星雲や球状星団)の中に残されています。

天の川に隠された古代の「化石銀河」が見つかる!
(画像=天の川銀河とそれを包むハローの概略図。 / Credit:名古屋科学館、『ナゾロジー』より引用)

かつて天の川銀河と衝突し取り込まれた小さな銀河の星たちは、詳細に調査するとその化学組成や運動速度が異っていることがわかってきます。

ハローの中からそうした星を探すことで過去に合併した銀河を探すことができるのです。

しかし、私たちの銀河は内側から徐々に積み上げられて形成されたため、最古の合併を調べるためには天の川銀河の中心部分を見なければなりません。

この銀河中心部は、多くのチリが密集していて可視光で観測することは困難です。

そこで天の川銀河形成の歴史を詳細に調べるため実施されたのが、天の川銀河の広域を赤外線観測した調査プロジェクト「APOGEE (Apache Point Observatory Galactic Evolution Experiment: アパッチポイント天文台銀河進化観測実験)」です。

「APOGEE」は宇宙の広域を調査する「SDSS-Ⅲ」のプロジェクトの1つで、アメリカ・ニューメキシコ州にあるアパッチポイント天文台の広視野望遠鏡を使用しています。

10年間に渡り天の川銀河全体から50万を超える星のスペクトルを測定し、これまでにない膨大な観測データを提供してきました。

今回の研究は、この「APOGEE」のデータを元に天の川銀河中心部を分析したのです。

化石銀河「ヘラクレス」

天の川に隠された古代の「化石銀河」が見つかる!
(画像=地球から見た天の川銀河の全景。赤い領域はヘラクレス化石銀河が由来の星があるおおよその範囲を示す。 / Credit:Danny Horta-Darrington (Liverpool John Moores University), ESA/Gaia, and the SDSS、『ナゾロジー』より引用)

発見された化石銀河は、天の川ができたときに不死身の身体を授かったというギリシャ神話の英雄にちなんで「ヘラクレス」と名付けられています。

ヘラクレス銀河は約100億年前、まだ誕生間もない天の川銀河と衝突したと考えられています。

上の画像の赤く示された領域に、ヘラクレス銀河由来と考えられる星が散らばっていました。

「このような化石銀河を見つけるには、何万もの星の詳細な化学組成と動きを調べる必要がありました。しかし、天の川銀河の中心部にある星は、星間塵の雲に隠れているため、このような観測は難しいのです。APOGEEは、そのチリを突き破り、天の川銀河の中心部をこれまで以上に深く見ることを可能にしてくれました」

研究チームの1人イギリスのリバプール・ジョン・ムーア大学(LJMU)のリカルド・シアボン氏はそのように研究を説明しています。

「まさにわらの山から針を探すようなものでした」研究筆頭著者であるLJMUの大学院生ダニー・ホルタ氏はそんなことを述べています。

これが大変な調査だったことは、そんな研究者の感想からも伺えるでしょう。

こうした調査によって、調べられた数万の星の中で、化学組成や速度が他とは著しく異なる星が数百個発見されたのです。